Archi.etc

Architecture & Things

アイルランドでのワーホリを通じて知ったメリット・デメリットと1年間の費用について

首都ダブリンでは、暮らしに困ることのない適度な都会感がある一方で、少し足を伸ばせば息を飲むような大自然を満喫できるアイルランド。

現地の人によってはアイリッシュアクセントがありながらも英語が学べる国として、ワーキングホリデーや学生ビザなどで語学留学をする方が増えてきました。

このエントリでは、アイルランドにワーホリビザで実際に現地で暮らした経験からのメリットとデメリットをまとめておきます。

ちなみに僕の場合は、アイルランドで10ヶ月暮らし、そののち2ヶ月間はヨーロッパ圏内で旅をしながらトータル1年間の渡航を終えた。という内訳です。

したがって、メリットとデメリットについては10ヶ月間のアイルランド滞在で感じたものを。

最後には、ヨーロッパ圏内での旅を含めて1年間で使ったお金についてもまとめておきますので、渡航を検討している方にとって参考になれば嬉しいです。

アイルランド渡航のメリットについて

まずはメリットから。8つの視点でまとめましたので、ひとつひとつ解説いたします。

ヨーロッパ圏内では比較的、治安が良い

治安が良いヨーロッパの国として、たびたび挙げられるアイルランド。実際に暮らしてみた実感値としても治安は良いと感じました。

ヨーロッパ旅行にいってアイルランドに帰ってきた友人が、「やっぱりアイルランドは落ち着くわ〜」と口を揃えて言うのには納得です。

もちろん日本と比べてスリ被害の話はよく聞きますが、重犯罪の話はほとんどありません。

自分が男ということもあるかと思いますが、夜11時頃まで飲んでから、家まで30分ほどの道のりを歩くなかでも危険を感じたことはありませんでした。

とはいえ、住んでいるエリアによるのも事実。

たとえば、ダブリンを南北で分けるリフィー側の北側のエリアは治安が悪いといわれています。

夜に押し倒されてカバンを強奪されたという話を聞いたこともあり、住む場所には気を使うべきでしょう。

またダブリンから少し離れたダンドークという街では、2017年に日本人の方が殺害される事件が発生しています。

稀な事例ではありますが、日本以外で暮らすことの危機感は忘れてはいけません。 

街中にカフェやパブが沢山ある

首都ダブリンでは特に、カフェやパブが密集しており、外出中の時間つぶしだけでなく

カフェやパブめぐりを楽しむことができます。

個人的なお勧めのカフェとパブについては、下記のエントリにまとめていますので、参考にどうぞ!

 ●カフェ編

●パブ編

自炊をすれば食費は安く抑えられる 

ヨーロッパ圏のなかでは、物価の安いといわれるアイルランドですが、日本と比べれば高いのは言うまでもありません。

とはいえ、スーパーマーケットで食材を買って自炊をすれば意外と安く抑えることができます。

特に肉・野菜・乳製品に関していえば、店舗によっては日本より安い場合も。

個人的に自炊をするときは、週末、大きな鍋に「手羽・人参・たまねぎ・ひよこ豆・キドニービーンズ・トマト缶・水・塩」を入れて1週間分のスープを作って、パンと一緒に毎日淡々と食べる。これで1週間トータルの食費は、10ユーロ前後。

自炊は時間の無駄でしかないと思っているゆえ、自炊を負担なく行うための極端な例ではありますが、もう少しこだわっても意外と食費は高くならないはずです。

芸術や歴史に触れられる文化施設が多い

これは首都ダブリンに限定されますが、美術館や博物館などの文化施設が多いのが嬉しいところ。

たいていの場合は無料で楽しむことができ、個人的にはアイルランド国立自然史博物館はよく行っていました。

以前に、ことりっぷさんの連載でも書きましたが、こちらのフォトギャラリーもお勧めです。

●参考

格安もしくは無料で英語を学べる場所がある

これはアイルランドに限ったことではありませんが、きちんと探せば格安もしくは無料で英語を学べる場所があります。

たとえば、教会での格安クラスや図書館で定期的に開催される交流会のようなもの。

個人的には下記の教会で開催されるものが好きで、たびたび行っていました。

もちろん宗教の勧誘などはなく、気になって「勧誘とかしないの?」と聞いてみたことがありますが、「まあ、興味があれば教えるけど、何を信じるかは人それぞれやんか〜。むしろ仏教とか詳しい?仏教とかアジアのやつ知りたいんやけど。」という感じでした。

●Rathgar Methodist Church

家から徒歩5分の場所にあったこともあり、誰かと話したい時たまに行っていました。

ここはレッスン形式ではなく、近所のおじいちゃん・おばあちゃんが集まってコーヒーを飲んだりクッキーを食べたりしながら、お喋りするのみ。

月・水・金曜の朝10:30〜12:00で行われており、途中で抜けるのも自由。1ユーロだけ箱に入れて、あとはお喋りを楽しむだけ。

お年を召したアイリッシュしかいなくて、ほっこりした時間を過ごせます。

URL: http://rathgarmethodistchurch.com/

●Abbey Street Methodist 

こちらはきちんとしたレッスン形式で、曜日ごとに異なる時間帯でレッスンが開催されています。タイムテーブルは、写真をご確認ください。

ダブリンで知り合った友人に教えてもらって以来、好きだったカフェの近くということもあり、よく足を運んでいました。

レッスンはファシリテーターによって進め方が異なり、個人的には木曜18:00〜のOrlaがお勧め。会話の回し方が上手く、いちいち仕草が可愛い女性です。

URL: http://www.abbeystreetchurch.ie/

格安でヨーロッパ旅行ができる

アイルランド発祥の「RYANAIR(ライアンエアー)」と呼ばれるLCCがあります。このLCCが本当に安い。

隣国イギリスや他のヨーロッパへの航空券に関して、往復でも1万円を切るのが通常で、国と時期によっては往復2千円〜5千円という航空券もあるほど。

RYANAIRの存在に関しては、アイルランドを選んだ個人的な理由のひとつ。アイルランドを拠点にすることで、お安くヨーロッパの建築を見てまわることができました。

アイリッシュの人柄は本当に最高

これはもう、お世話になった方みんな最高だったという話なのですが、知り合ったアイリッシュはみんな優しくてフレンドリーでした。

一般的なアイリッシュの人柄は、情に厚く友好的とよくいわれますが、実際の経験からも納得しています。

パブで飲んでいると、たいてい現地の方に絡まれるのですが、そういう出会いも含めて最高でした。

日本人が少ない環境で英語を学べる

近年では留学先として注目されるようになり、アイルランドに来る日本人は増えてきましたが、カナダやオーストラリアに比べてまだまだ日本人が少ないのは、間違いありません。

カナダやオーストラリアに語学留学をしたけれど、学校は日本人ばかりで住む場所は日本人用シェアハウス。あげくの果てに日本食レストランでバイトをして、思っていたほど英語を使うことなく無事帰国。

という話はよく聞きますが、日本人が少ないアイルランドに関しては、上記のようなパターンを避けられる可能性は高いかと思います。

とはいえ、日本人が多かろうが少なかろうが、全ては本人の心持ち次第。そもそも、これをいちばんのメリットとして留学先を決めるのは的外れである、という前提でお考えください。

アイルランド渡航のデメリットについて

ここからは先はデメリット。実際に暮らしてみて感じた、7つのデメリットについて解説します。

アジア人への差別は少なからずある

ヨーロッパ圏内では治安が良いアイルランドですが、アジア人に対する差別はあります。

道を歩いていて「ニーハオ」と声をかけられることや、通りすがりのティーンエイジャーに大声で脅かされること、10ヶ月間で一度だけですが爆竹を投げられたこともありました。

このようなアジア人差別は根深く、語り始めると切りがないため、ひとまず「差別で悲しい思いをすることもある」という事実だけは書いておきます。

正直なところ、心が荒んでいたとき「Fuck off!!!」と叫び返してしまったこともありましたが、将来的に己の行為を恥じてくれる期待を込めて「I'll forgive you.」と返す穏やかさとスルー力を身に付けましょう。

残念な日本人駐在員が結構いる

意外と危険なのは、現地にいる日本人である。ということもあるので、念のため書き残しておきます。

女性の方は特に要注意ですが、日本に家族を残して海外転勤になった日本人駐在員が、右も左も分からない女性渡航者をもてあそぶ。

日本人駐在員だと会社からそこそこ良い家を与えられるので、率直に言うとヤリ部屋を作って、複数の日本人駐在員で女性を連れ込むことがあるようです。

新しい女性とつながるために、毎週ミートアップに参加している日本人駐在員もおり、家族と離れて女遊びをしていることを誇っていた方も。

アイルランドには、こんな恥ずかしい大人もいるんだ!と興味深く話を伺っていましたが、すぐに時間の無駄だと気づき、僕は席を立ちました。

接客が残念に感じられることがある

日本の接客が丁寧すぎることもありますが、アイルランドには移民が多いという背景も関係しています。

アイリッシュの店員さんに関しては、陽気でフレンドリー。付かず離れずの接客が個人的にとても好きでした。

一方で、スーパーマーケットやコンビニなど移民の店員さんに関しては、店員同士で喋りながらこちらと目を合わせることもなく接客を行うということが多く、残念に感じられることが少なくありません。

たいていの場合、ご本人には悪気はなく、残念に感じてしまうこちらの価値観の問題でもあるので参考までに。

基本的には「まあ、日本が過剰すぎるからね。」と済ませてしまいましょう。

ダブリン以外に日常的な娯楽はない

もちろんダブリン以外の街には、観光にうってつけの場所や、ローカルパブがあり、それぞれに素敵な面を持ち合わせています。

しかし、若い方に人気のお店や、美術館・博物館など日常的に楽しめる場所は首都ダブリンに集中しており、ダブリン以外の街は「まあ、一回行けば十分かなあ」というのが正直な感想でした。

何を求めてアイルランドに行くかにもよると思いますが、田舎の風景で羊を眺めながら暮らしたい!という感じでなければ、飽きずに住める街はダブリンに限定されてしまうと思います。

外食費用はやっぱり高い

メリットで、自炊すれば食費は安く暮らせることを挙げましたが、一方で外食費は高いです。

ブリトーやケバブなど学生証を使って安く済ませられるところもありますが、通常だと1食10ユーロ前後かかってしまい、外食に関してはやはり物価の高さを感じるところです。

お財布と相談して自炊と外食を併用しながら、上手く暮らしていきましょう。

部屋探しの難易度が高い

アイルランド国内では家賃が高騰していると言われており、それに加えて部屋の空きが少ないのが現状です。

現地のアイリッシュでさえも部屋探しには苦労しています。

部屋探しのコツと注意点については、下記エントリでまとめましたので、必要に応じて参考にしてみてください。

仕事探しの難易度も高い

部屋だけでなく仕事探しも大変です。特にオフィスで働くような業種だと、難易度はかなり上がります。

英語が堪能でIT系の技術がある方はやはり強いのですが、売りにできる技術がないと希望の職種に就くのは難しいという印象。

仲の良かった韓国の友人に関していえば、かつてヨーロッパの大学でマーケティングを専攻しており英語もビジネスレベルだけど、仕事が無くてアジアンレストランでアルバイトしかできないと嘆いていました。

正直なところ、仕事に関しては運とコネクションが鍵になるのですが、希望の仕事で食べていくのは難しく、資金が尽きて泣く泣く帰国する方も多くいます。

したがって、渡航資金の準備は慎重にされることをお勧めします。

1年間の渡航における費用について

最後に、今回の10ヶ月のアイルランド暮らしと2ヶ月のヨーロッパ旅行でかかった費用についてまとめておきます。

前提として、ほぼ毎日カフェやパブに行ったり、自炊をあまりせずに週の半分くらいは外食をしていました。

ほとんど毎日お酒を飲む、食べたいものを食べる、できるだけ我慢せず節約も特に考えなかった事例としてお考えください。

少しイレギュラーかと思いますが、皆さまの資金計画において参考になれば嬉しいです。なお、全て日本円に換算しています。

渡航前にかかった費用

1,190,710円

備考:6ヶ月間の語学学校、2ヶ月間のホームステイ、海外保険、 日本からアイルランドへの航空券など

10ヶ月のアイルランド生活費

食費(外食含む)

404,883円

カフェ/パブ代

213,321円

家賃

349,483円

備考:光熱費含む

旅費

777,806円

備考:アイルランド国内、イギリス、東欧数カ国をまわった際の航空券や宿泊費、外食費など

その他

688,154円

備考:生活用品や散髪などの生活費、Kindleや現地の本屋さんで購入した書籍、ケンブリッジ検定の受験費用、クラウドファンディングで支援した総額、ダブリンのカレー屋さんでぼったくられた3ユーロなど

2ヶ月間の旅行費用

289,117円

備考:フィンランド2週間、フランス1週間、ドイツ4週間の旅行に伴う航空券や宿泊費、外食費など

1年間の合計金額

ここまでの記載した全ての金額を合計したものが下記になります。

3,913,474円

時期により換算レートの違いがあるので、ざっくりで考えると400万円前後というところでしょうか。

この1年間は我慢をすることはやめようという思いで暮らしつつ、旅行も惜しまなかったので、思いのほか安く済んだなあという印象です。

以上、アイルランドのワーホリを通じて知ったメリット・デメリットと、1年間の費用についてでした。

これから渡航を考えている方にとって、お役に立てば嬉しいです。

ちなみに1年間、僕がどのように暮らしていたかについては、以下のエントリが参考になるかもしれません。

フィンランドで食べた一生分(15+1店舗)のシナモンロールから選ぶ最高の逸品および考察

「日本のものと、まったく違う。」

フィンランドで初めてシナモンロールを食べたとき、舌で、脳で、日本で食べてきたシナモンロールとは完全に別物なんだと知りました。

見た目にも美味しい生地表面のカラメルと砂糖、ふわっと香るシナモンとカルダモンのスパイス感。ただただ、美味しい。

「いつかフィンランドでたらふくのシナモンロールを食べたい」という夢を抱くきっかけになった映画「かもめ食堂」のなかで、登場人物たちが食べていたこの食べ物の美味しさは想像以上に贅沢で、味は複雑に構成されていて、それぞれに魅力的な個性をもっていました。

このエントリでは、僕が食べ歩いた全てのシナモンロールを超独断と偏見によりご紹介します。

フィンランドを旅行される方にとって、滞在中のベストチョイスにつながれば僕は嬉しいです。

フィンランドのシナモンロールの特徴とは?

日本のシナモンロールというと、上部に渦を巻いたふわっとした生地と、アイシングと呼ばれる白い砂糖衣がとろっとコーティングされている菓子パン。そんなイメージではないでしょうか。

一方で、フィンランドのものは渦巻きが個体の左右にひとつずつ、生地は見た目よりも重量が感じられ、表面の食感ははサクサク・ザクザク、ときにパリッと。

生地上部にはアイシングではなく、フロストシュガーと呼ばれるゴマ粒大の砂糖がまぶされています。

半分に割ってひとくち頬張ると、ザクっとした食感とともにシナモンとカルダモンの風味が口いっぱいに広がるフィンランドのシナモンロール

現地の言葉ではシナモンロールではなく、ビンタされた耳という意味をもつ「コルヴァプースティ」という名前で呼ばれ、今回のフィンランド滞在で僕がいちばん声に出した単語であります(もはやコルヴァプースティと叫ぶだけの機械と化していた)。

シナモンロールをご紹介するにあたり事前にお伝えしたいこと

僕はフィンランドのシナモンロールを食べるのが今回初めてであるということで、初めに現地新聞によるシナモンロールランキングで1位を獲得したというお店に足を運びました。

まずはこちらでフィンランドのシナモンロールの概要を掴んでいただければ幸いです。

0. 最高を知らずしてものを語る資格なし。地元新聞主催ランキング1位のポテンシャルに触れる「Kanniston Leipomo」のシナモンロール 

全体的に甘さは控えめ。日本のシナモンロールとの違いに驚き、その美味しさに感動しました。

シナモンの風味は主張しすぎておらず、生地の表皮はパリッと焼きあがっている一方で、中はふわっとしています。

お店のWEBサイトはこちら▶︎Kanniston Leipomo

シナモンとカルダモンのバランスが良くシンプルに美味しいけれど、直感で尖った個性は感じられず「たしかに美味しいけれど、ランキングで1位を取るほどのもんなんだろうか…」と。

現地では好まれる味なのかもしれないけれど、「もっと心を打つシナモンロールがあるんじゃないだろうか(実際あった)」という気がしてなりませんでした。

そんな経緯で、「ここはひとつ、徹底的にやるか」と現地情報を駆使して美味しいシナモンロールを掘り進めることにしました。

品評会場

ということで、ここからは残りの15店舗について僕の超独断と偏見により、特徴をご紹介します。

厳密なランキング形式というわけではありませんが、前半から後半にかけて美味しいものへと続いており、最高の逸品は最後に。

今後フィンランド旅行に行かれる方にとって、滞在中のベストチョイスにつながれば僕は嬉しいです。

1. 越えてはならぬ一線を越えた。素晴らしい建築に騙されてはいけない雰囲気美人系「Cafe Aalto」のシナモンロール

フィンランドが誇る建築家アルヴァ・アアルトによるアカデミア書店。

三層にわたる吹き抜けと回廊式の店内には、天窓から自然光がたっぷり降り注ぎ、アアルトによる建築を巡る際にはまずこのアカデミア書店からスタートするのがお勧めです。

さて。素晴らしい建築の一方で、シナモンロールは最低でした。

書店のなかに併設された「Cafe Aalto」でいただけるシナモンロールは、シナモンの風味はちょうど良いものの、生地はふかふかというよりはスカスカ。満足感は極めて低いといえます。

後にも先にも、ここまでスカスカ感のある個体はありませんでした。

今回訪れたお店のなかで唯一、温めて提供される形式でしたが「むしろやめて」という気持ち。熱が冷めてきて、スカスカの生地がくたっとした状態は悪夢でした。

今回の品評において金額は考慮していませんが、1個あたり2.5〜3.5ユーロが相場というなかで5.4ユーロという極めて強気な価格設定。

観光地としての価値が高いのをいいことに、越えてはいけない一線を越えていると感じました。

▶︎Cafe Aalto

2. お店の風格の一方で感じざるを得ない味のペラさ。150年を超える歴史をもつ「Ekberg」のシナモンロール

1852年から続く老舗であり、高貴な雰囲気をまとったマダムたちがコーヒーとお喋りを楽しんでいたのが印象的。

そんな「Ekberg」のシナモンロールに感じたのは、圧倒的な不足感。

甘さはかなり控えめでカルダモンのスパイス感もほぼ感じられず、良いように言えばお淑やかでお上品なのかもしれませんが、個人的には「味がペラい…!」と感じてしまうほどの物足りなさでした。

一方で、しっとりとふわふわの間をいく生地には、多くの方に好まれるであろうポテンシャルが感じられ、生地のレベルは高いだけに味の物足りなさに落胆せざるを得ませんでした。

歴史あるお店だけに接客は一流でしたが、シナモンロールは三流以下。こちらのお店では、シナモンロール以外の注文をお勧めします。

▶︎Ekberg - Perinteitä jo vuodesta 1852

3. エロくはない「エロマンガ」のシナモンロール

ヘルシンキで最も古い歴史をもつ屋内市場オールド・マーケットホールの近くに店舗を構える「Eromanga」。

ハカニエミと呼ばれるマーケットでもブースを出店しており、今回はハカニエミのマーケットでいただきました。

砂糖とシナモンの主張が全体的に強く、今回食べ歩いたなかでは最も甘いと感じました。生地の表面では砂糖が良い塩梅でカラメル化しており、見た目にも美味しい。

生地は軽めのふわふわ系でありながら気泡の密度が低いために、食べ応えはきちんと感じられます。

一方で、日本のコンビニ菓子パンをおもわせるチープ感があり、店名のインパクトの割には普通以下のクオリティだなと感じました。

▶︎Eromanga – Kotileipomo Helsingissä

4. 握りこぶしを超える大きさはインスタ投稿必至。ヘルシンキ最大と言われる「Cafe Esplanad」のシナモンロール

事前調査で現地の人たちが「ここのコルヴァプースティはマジでデカい」と言っており、その大きさが気になる存在でしたが、確かにデカかった。

今回食べ歩いたなかでは間違いなく最大であり、大人の握りこぶしを軽く超えてくるサイズ感は、おもわずインスタ投稿してしまう方も多いことでしょう。

しかしながら、味のバランスに関しては若干の不足感。

シナモンの香りは適度にあるもののカルダモンのスパイス感が弱く、甘ったるいうえにサイズが大きいという状況は好ましくないどころか苦行ともいえます。

生地はやや弾力があり、もっちり感が非常に強いため食感としての食べ応えもあります。

サイズの大きさもあいまって、これひとつで一食分とカウントできそうな勢い。お試しの際は、お腹の空き具合にご注意ください。

▶︎Café Esplanad | Helsinki / Helsingfors

5. 硬派な一面と足りない甘さ。純喫茶好きには堪らないノスタルジックな雰囲気が漂う「Marocco」のシナモンロール

ヘルシンキ中心部からはやや離れたアルヴァ・アアルト設計のフィンランディアホール近くに位置しており、静けさと純喫茶をおもわせる店内の雰囲気につい長居してしまいました。

シナモンロールに関して、まず驚いたのは生地の硬さ。かなりの噛み応えがあり、今回のシナモンロールのなかでは最高の硬さをもつ個体になります。

生地の詰まっている感が強く、パンとして非常に美味しいと感じました。

一方で、シナモンの風味とカルダモンのスパイス感は全体的に弱め。先のご紹介でペラさを感じた「Ekberg」ほどではありませんが、控えめが過ぎます。

硬派な生地に対してもう少し甘さ、そしてシナモンとカルダモンのバランスの良さがあれば、さらなる飛躍を遂げそうな伸びしろを感じる個体でありました。

▶︎Kahvila Marocco

6. 疲れた脳に糖分を。テンペリアウキオ教会の空間で思考を駆け巡らせ切った建築クラスタにお勧めしたい「Cafetoria」のシナモンロール

ヘルシンキで建築を巡る方にとって見逃せない、大岩をくり抜いて造られたテンペリアウキオ教会から徒歩5分ほどの場所。

オリジナルのコーヒーグッズも販売する「Cafeteria」では、こだわりのコーヒーによく合うシナモンロールをいただけます。

若干いびつに巻かれた生地はやや硬めで噛み応えがありながら、中はふんわり。気泡が多めのふんわり感と硬めの表皮のバランスは絶妙といえます。

断面の観察状況からは、生地内に練りこまれているシナモンの総量は少ない印象ですが、シナモンの風味はきちんと感じられます。

一方で、カルダモンのスパイス感が薄めなので味に奥行きはないものの、お店のコーヒーと組み合わせて食べることが前提であれば、カバーすることができるスパイス感不足だと感じました。

コーヒーありきの素晴らしさという点で、シナモンロール単体での評価はそれほど高くはありませんが、テンペリアウキオ教会の複雑に絡み合う素材と空間構成の妙に触れて思考を駆け巡らせた後にコーヒーとシナモンロールを、というシチュエーションであれば是非お試しいただきたい組み合わせです。

▶︎Organic and ethical coffees, crafted in Finland with passion and love for what we do - Etusivu

7. 街の喧騒を忘れてゆっくり頬張る。隠されすぎの隠れ家カフェ「GOTTLAND Deli」のシナモンロール

僕が今回の旅で最も感動したアアルト邸の近く、団地が立ち並ぶ一角に佇むとても小さな隠れ家カフェがあります。

木々が茂る道を歩きながら、あまりの見つけにくさとに「さすがに隠されすぎ」と感じましたが、シナモンロールのクオリティの高さは隠しきれないほどでした。

シナモンの風味とカルダモンのスパイス感とのバランスが恐ろしく絶妙。味の良さでは、現地新聞ランキングで1位を獲得した「Kanniston Leipomo」の上位互換といったところです。

生地がもつバランスの良さも特筆しなくてはいけません。ふかふか感としっとり感のバランスを保ちつつ、表皮はサクサクと。巻かれた生地の隙間に行儀よくシナモンが詰まっており、断面も美しいと思いませんか?

6席ほどしかない店内に近所の人が集まる様子は、ローカル感がありありと感じられ、そんなお店の空気と合わせて是非お試しいただきたいシナモンロールです。

▶︎Gottland

8. 地元ファンの多さにも納得。シナモンのねっとり感と生地のもっちり感で心を掴みかかる「Regatta」のシナモンロール

まずお伝えしたいのはお店の個性。海に面したロケーションとコテージのような佇まい。いちばんの売りは焚き火を使ってセルフサービスで焼くソーセージです。

またコーヒーをお代わりするとなぜか5セントをもらえるという謎のサービスもあり、千鳥風にコメントするならば「クセがすごい」。

中心地からのアクセスはそれほど良くないながらも現地での評価は高く、ここでいただけるシナモンロールもまた人気なのだそう。

生地表面にはアーモンドがまぶされており、見た目にも個性を放ちつつ食欲を誘います。

驚いたのは生地のふわふわ加減。今回のシナモンロールのなかで最もふわふわ感が楽しめる個体といえます。

それに加えて素晴らしいのは、シナモンのねっとり感。

生地のふわふわ感とこのねっとり感の組み合わせはやみつき必至で、この日までに食べてきたシナモンロールのイメージを覆してくれる美味しい衝撃がありました。

一方で、甘さが強すぎるのがとても惜しい。ブラックコーヒーとの組み合わせでないと辛いところがあり、単体での注文はお勧めできません。

▶︎Cafe Regatta - Tuhansien tarinoiden kahvila

9. 映画かもめ食堂のことは一旦忘れよ!良い意味で期待を裏切ってくれる「Atelier KAMOME」のシナモンロール

多くの方にとってシナモンロールといえば、映画「かもめ食堂」というイメージがあるかもしれません。

映画の舞台となったレストランはヘルシンキに実在しており、そのレストランに併設するカフェとして「Atelier KAMOME」はあります。

第一印象としては、「映画で出てきたシナモンロールと全然違う見た目だ」ということ。

映画のものより小ぶりな印象で、かつ若干いびつな巻かれ具合からは個性を感じます。

とはいえ、映画に忠実かどうかは問題ではありません。

小ぶりながらずっしりと重いシナモンロールをひとくち食べてみて驚いたのは、かなりのもっちり感。

表皮にパリパリ感を残しながらも、それを遥かに超えるもっちり感があり、写真からも見てとれる密度がもっちり具合を物語っています。

きちんと甘く、シナモンの風味も感じられるバランスの良さから、直感で日本人の舌にウケそうだと感じました。

映画「かもめ食堂」のことは一旦忘れて、是非お試しください。

▶︎Atelier KAMOME - ホーム | Facebook

10. ヘルシンキNo.1カフェが放つ一品。生地に詰まった美味しさとマスターの思想に感服「Ipi Kulmakuppila」のシナモンロール 

居心地の良さとお店のコンセプトから、僕が最も感銘を受けたヘルシンキのカフェ「Ipi Kulmakuppila」。

ここでいただけるシナモンロールのクオリティもまた素晴らしいものでした。

▶︎お店は下記エントリにてご紹介しています

まず驚いたのは、生地の巻かれ方。

渦巻きが左右ほぼ均等に現れるようにして巻かれるシナモンロールですが、こちらは片側のみ渦巻きを設けつつ生地に練りこまれたシナモンをがっつり見せつけるスタイルをとっています。

見た目のとおりシナモンの風味はしっかり感じられて、どこをかじっても満遍なくシナモンが感じられることに感動しました。

生地は硬めでしっかりと密度が保たれているタイプ。

表皮のサクサク感とフロストシュガーのガリっと感とのバランスも良く、どんな角度で切り取っても欠点のない優等生といった印象です。

カフェ紹介エントリでも語っているとおりですが、お店のインテリア、コンセプト、そしてシナモンロールで申し分のない一店。

是非お試しください。ヘルシンキ滞在がきっと豊かになるはずです。

▶︎Ipi Kulmakuppila

11. 小ぶりな生地に凝縮された魅力と可愛い店員さんに思わずモイモイ。地元のお客さんで賑わう「Hopia」のシナモンロール

余談ですが、フィンランド語で「やあ!どうも!」にあたる表現として「Moi!(モイ!)」という言葉があります。

そして「Moimoi!」と繰り返すと日本語でいうところの「バイバイ」となるのですが、街中でモイ!やモイモイ!が飛び交う様子はとても可愛らしい。特に女性が言われた時の可愛さはなんとも言えないインパクトがあり、思わずモイモイしてしまう男性も多いのではないでしょうか。

そして、ベスト・オブ・モイモイを体験できるのがこちらの一店。フィンランドのきゃりーぱみゅぱみゅのような店員さんが放つ「モイモイ」はまさにフィンランドの国宝でありました。

もちろんモイモイ抜きにて、シナモンロールのレベルは非常に高いものでした。

今回のシナモンロールのなかで最も小さいサイズでありながら、もっちり感があり密度の高い生地には安定感を感じます。

表皮の砂糖が溶けたカラメルのサクサク感と香ばしさが強く、それがシナモンの風味に奥行きをもたらしており、地元のお客さんの足が途絶えない様子にも納得。

地元の人たちに長く愛されるローカル感と、美味しいシナモンロールを楽しみたい場合は、こちらのお店がお勧めです。

▶︎Konditoria Hopia – Konditorio leivonnaiset kahvila töölö helsinki

12. "羽根付きシナモンロール"を提唱したい。カラメル色の羽根に心を射止められる「Bon Temps Cafe」のシナモンロール

羽根付き餃子といえば蒲田の「ニイハオ別館」ですが、"羽根付きシナモンロール"といえばヘルシンキの「Bon Temps Cafe」です。

焼き上げる過程で溶けたカラメルが広がり、シナモンロールの羽根となったその様子はまさに芸術。チーズブレッドなんかでも、たまにありますよね?こういうの。

ゆっくり慎重に羽根を食べるときのあの体験は、神々の遊び。味という概念を超越した、喜びの化身とも形容されるやつです。

もちろん特徴は羽根だけではありません。

生地は硬めでサクサクとしており、重たいクロワッサンと言えるほど積層する生地からは強い香ばしさが漂っています。

しっかり甘めに焼き上げられており、コーヒーとの相性は抜群。

単体で食べても美味しかったですが、硬くて甘い生地をひとくち頬張りコーヒーを口に含んだときのマッチングはまさに至福。羽根のインパクトだけに収まらない美味しさがそこにはあります。

甘い味がお好きで、なおかつコーヒーとのハーモニーを楽しみたい方は是非お試しください。

▶︎BonTempsCafe

13. パティシエが手がけるバターの香る小ぶりな宝石。次元の違いを感じる「Patisserie Teemu & Markus」のシナモンロール 

2人の男性パティシエによるパティスリーには、まるで宝石のようなシナモンロールがありました。

普段ケーキを提供しているのであろう可愛らしいお皿で提供される様子に、期待値は上がります。

アップで確認すれば一目瞭然ですが、群を抜いて美しいシナモンロールであることが分かります。

大小を掛け合わせたフロストシュガーに、スライスされたナッツが少々。さすがパティシエによるシナモンロールだけあって、芸術性の高さにも抜かりがありません。

表皮はややパリッとさせつつ、中は日本で好まれるようなソフトなパンの食感。

それでいて、今までのシナモンロールで感じることのなかった強いバターの香りが相まって、まるで本当にケーキを頬張ったときのような幸福度で満たされます。

他のシナモンロールを寄せ付けないほどの高貴な雰囲気をまといつつ、きちんと美味しい実力も備えている。

見た目と味が極めて高い水準で実現されている芸術的なシナモンロールといえます。

▶︎Konditoria Helsingin keskustassa - Patisserie Teemu & Markus

14. 変幻自在のトリックスターとして。独自の戦略でファンの記憶に深く残る名作「Sävy」のシナモンロール

本当はこのシナモンロールが最高の地位に着いても良かった。しかし、これをベスト・オブ・シナモンロールにすべきか本当に悩んだ。結果、しなかった。

なぜならば、あまりに特異であるためシナモンロールという枠に収めて良いのか結論づけられなかったからです。

シナモンロールの特徴であるこんがりとした焼き色や表皮のフロストシュガーはなく、アイボリーカラーの生地は驚くほどのもっちり感。本当に驚くほど、もっちり。

カルダモンのスパイス感は控えめですが、シナモンとバターの風味がともに高くて好印象。

個人的には物凄く好きなのですが、トリッキー過ぎることが否めません。

入場パフォーマンスと、変幻自在のトリックスターと呼ばれる所以になった独自の戦い方で、今もなおファンの心に残る2002〜4年最盛期の須藤元気が思い出されて目頭も熱くなります。

前述の食感も僕は大好きだし、味も申し分なし。僕の好み100%の視点でいえばトップにしたいところなんです。

しかしながら、乳白色の見た目といい、ポン・デ・シナモンロールと言いたいほどのもっちり感といい、これは本当にシナモンロールの枠に入れて良いのか…

っていうか、そもそも生地がロール状になってねぇ……っ!!!

という経緯で悩みに悩んだすえ、ベスト・オブ・シナモンロールはこの後に続く個体に決めました。

▶︎Kahvila Sävy - ホーム | Facebook

15. バリッと固めの生地に控えめな甘さのベストバランス。週7で食べたい「KAFFA ROASTERY」のシナモンロール 

さて。今回2週間の滞在中、徹底的に食べ歩いたなかで最も美味しいと感じたのがこちらのシナモンロールです。

淡く焦げ目のついたカラメルとバリっと硬めの生地は、非常に食べ応えがあり、かぶりつくたびに香ばしさが嗅覚を刺激。

生地の中はふんわりしており、それはまるで硬い表皮に守られていた柔らかで贅沢な美味しさが解放されていく、そんな感覚をおぼえます。

甘さは控えめながらシナモンとカルダモンのスパイス感はガツンと感じられて、「無骨で旨い」ともいえるこの味覚体験は甘いものが苦手な方にも食べていただきたい。そんな逸品です。

お店のwifiパスワードを聞いたときに「コルヴァプースティ」と返答されたときには笑ってしまったのですが、パスワードにシナモンロールを持ち込むあたりにお店のシナモンロール愛が感じられます。

▶︎KAFFA ROASTERY - Kahvipaahtimo Punavuoressa

ちなみに、12.以降については正直なところどのシナモンロールがトップでもおかしくない状況でした。

今のレシピに辿り着くまでの間にかなりの試行錯誤があったのであろう、味のレベルの高さと複雑さ。そして、それぞれのシナモンロールが放つ個性。

甲乙付け難いなか、本当に毎日食べたいかという目線で判断したときに「KAFFA ROASTERY」のシナモンロールに行き着いた。というのが今回のベスト・オブ・シナモンロール選定における決定打でした。

最後に

これは完全に偶然なのですが、僕がフィンランドのカフェ巡りをしたなかで厳選したカフェ3店舗について、今回のシナモンロールに関しても全て高評価に食い込むという結果になりました。

▶︎厳選した3店舗 

僕がカフェも選ぶための2つの大きな基準は、コーヒーの美味しさと、お店の居心地の良さ。

このことから、レベルの高いシナモンロールの背景には、それに見合う美味しいコーヒーがあるか、お店の内装は居心地の良いものであるかという要件も関わっていそうです。

それに加えて個人の好みも大きく関わると思いますが、今回の食べ歩きで感じたことが、今後フィンランドでシナモンロールを食べてみたいという方の手助けになれば嬉しいです。

アイルランドワーホリ9ヶ月目を迎え最も美味しいクリスプスを決める時がきた

【2017.11.16追記】

「クリスプス」ってなに?

ギネスとジャガイモの国アイルランド。この国に住み始めて早いもので9ヶ月目を迎えました。

アイルランドでのジャガイモは、日本でいうところのお米。ジャガイモ飢饉とよばれる悲しい歴史も持ち合わせつつ、今もなお食卓ではほぼ毎日のようにジャガイモ料理が並び、ギネスと同様にジャガイモもまたこの国を語るうえで欠かすことができません。

「クリスプス」と呼ばれる食べ物がある。

ざっくり言ってしまうといわゆるポテチなのですが、作り手のこだわりや親しまれ方に日本との違いが見られます。

こちらでは単なるスナック菓子ではありません。パブでお酒と楽しむ肴として、カフェにも必ず置かれているほどの日常的な軽食として親しまれており、さらには食前にちょっとつまむ前菜的な食べ方をされるほど。(ちなみに補足ですが、アイルランドだけでなくイギリスを含む英語圏では「ポテチ→クリスプス」、「フライドポテト→チップス」と言い換えられます)

それだけに味は一級。クリスプスに込められた熱い想いはプロダクトとしての品質に直結し、「まあ、ようはポテチやで」と一言で片付けることのできない魅力が詰まった嗜好品でありました。

そんなクリスプスですが多くのフレーバーが存在し、イギリス圏を含む競合各社が製造販売しており、良品を選ぶのも一苦労。

加えて、現在日本ではポテチの品薄につながるほどのジャガイモ不足が続いていると。

というわけでこの記事では、ジャガイモ不足の日本からジャガイモを求めてアイルランドに渡航される方、アイルランド在住の方に向けて、どのクリスプスが最も美味しいのかについて僕なりの目線で書き残しておきます。

 

評価基準について

前提としてフレーバーを絞ります。通常の塩味やオニオン&チーズ、サワークリームなどの多くのフレーバーがありますが、今回対象とするのは「ソルト&ビネガー」。

理由は、僕が常飲するギネスに最も合うフレーバーであるため。

ギネスビールは深いコクとモルトを焦がしたことによる苦味が特徴である神のお酒ですが、その味にマッチするのが「ソルト&ビネガー」。もちろん独断です。

以上の理由から今回はフレーバーを限定させていただきます。(そもそもフレーバーを絞らないと数が多すぎて、僕が太ってしまいます)

そして評価基準は、以下の3つ。

 

1. 厚み

食感の心地よさを左右するのはクリスプス1枚ごとの厚み。個人的に分厚くて食べ応えがあるものが好みなので、厚みがあればあるほど高評価としています。

なお、厚みを計測する機器・ノギスを日本に置いてきてしまったので、厚みの計測が目測であることをご了承ください。

2. バランス(塩気と酸味のバランス)

今回対象とするソルト&ビネガーは塩気と酸味のバランスがなにより大切。

どちらかに偏ってしまうとクリスプスとしてのトータルバランス、ギネスとの相性が損なわれてしまうことが分かりました。したがって、今回の評価基準のひとつとします。

3. ジャガイモ感

これは食べた時に、野菜としてのジャガイモの風味がどれだけ感じられるかを示したもの。

目安としてはカルビーのポテトチップスのジャガイモ感を最低値、じゃがポックルのジャガイモ感を最高値とします。

カルビーのポテチの時点でそこそこジャガイモ感はあると思うので、それを最低値としている今回の基準は「けっこう厳しめ」ということになります。

 

ちなみに金額についてはだいたい1袋2〜3ユーロあたり。販売店やディスカウントの状況により金額の変動があるため、今回の評価軸から金額は除きました。

日本のものと比べると高めの印象ですが、単なるスナック以上のクオリティのため金額には見合っていると感じます。

 

品評会場

1. Keogh's

厚み ★★★☆☆

バランス ★★☆☆☆

ジャガイモ感 ★★★☆☆

アイルランド国内のスーパーで最も目にするクリスプス。Keoghは「キーオ」と発音し、アイルランド国内ではよくみかけるサーネームです。

パッケージの色味のコントラストから、陳列棚のなかではもっとも目を引きやすいパッケージデザインであることも特徴。

そこそこの厚みがあるため食べ応えは満足できるものですが、味についてはやや酸味が強い印象。

使用しているお酢がリンゴ酢なので、酸っぱすぎるということはありませんが、塩気とのバランスという目線でいうとまだまだといったところです。

ちなみに厚みはこんな感じ。日本のポテチと比べると分厚いですが、アイルランドではこの厚みが標準となります。

このクリスプスがグルテンフリーであることが関係しているのかはよく分かりませんが、1袋を食べきっても胃もたれ感はまったく無し。バランスの良さが感じられる一品です。

総括すると、可もなく不可もなく万人に好かれるオールラウンダー型のクリスプス。

 

2. TAYTO BISTRO

厚み ★★☆☆☆

バランス ★★☆☆☆

ジャガイモ感 ★★☆☆☆

アイルランド発祥のスナック菓子企業「TAYTO」によるクリスプス。

この企業はTAYTO PARKとよばれる遊園地まで保有しており、ある意味で企業としての国への貢献度は高いといえます。

可愛らしいマスコットキャラクターが特徴で、スーパーではこのキャラクターがデザインされたスナック菓子をよく見かけます。

肝心のクリスプスの評価については、それほど高くはありません。

ビネガーの酸味が強すぎます。ギネスのお供ならまだ許せますが、たとえば映画を観ながらクリスプス単体でいただく場合などは要注意。お酒がないと味が濃すぎる印象です。

厚みは標準よりもやや薄く、物足りなさを感じざるを得ません。

厚みがそれほど無いうえに、クリスプス内の気泡が多い。それでいて脂っこすぎるという質量と胃もたれ感との関係性に矛盾まで孕んでいるという点で納得できない一品。

アイルランドのバリントン大使はTAYTOのチーズ&オニオンがお好みとのことなので、僕は大使とは馬が合わないと推測します。

総括すると、パッケージの高級感とBISTROというネーミングに品質が追いついていない残念なクリスプス。

 

3. O'Donnells

厚み ★★★★☆

バランス ★★★☆☆

ジャガイモ感 ★★★★☆

こちらもアイルランド発祥である企業「O'Donnells」によるクリスプス。

クリスプスの製造を始めたのは2010年と比較的歴史が浅いながらも今では、アイルランド国内での流通量ナンバー1という地位に就いています。

クリスプス1枚1枚の大きさは小さいものの、しっかりとした厚みがあります。

ピンクの皮が側面に残っており、さらにポテトの黄色味が強いことから見た目から食欲を掻き立ててくれます。

見た目のとおりジャガイモの風味も強く、塩気と酸味のバランスもなかなか。使われているお酢がリンゴ酢であることから、酸味のなかに甘味すら感じられる一品。

おそらくクリスプス1枚ごとのサイズが小さいため、油で揚げた際に発生するクリスプスの湾曲具合が強め。しかしながら、その曲がり具合がある種の野性味を醸し出していて決してマイナス点ではありません。

総括すると、国内ベストセラーというのにも納得できるクリスプス。

 

4. KETTLE

厚み ★★★★☆

バランス ★★★★☆

ジャガイモ感 ★★★☆☆

こちらは使われているお酢がバルサミコ酢という珍しいクリスプス。

とはいえ変わり種によくある奇をてらった感はまったくなく、塩気と酸味のバランスはかなり高いと感じました。

個人的にバルサミコ酢独特のコクの深い酸味が好きなのですが、それがしっかりと感じられる点で全国のバルサミコファンには堪らない一品。

クリスプス1枚1枚がとても大きく、今回食べたもののなかでは最大。

光を透過する佇まいが非常に美しくて、芸術的な目線でいうと間違いなく今回のトップになるでしょう。

厚みについても標準よりやや分厚く、しっかりと食べ応えがあります。

仮にフレーバーの味が全体的に強いとすると食後に苦しさを感じそうなボリュームですが、バルサミコ酢のまろやかな風味から軽く食べてしまえる一品でした。

総括すると、バルサミコファンには堪らないアイルランドが誇る芸術的クリスプス。

 

5. Hunky Dorys

厚み ★★★☆☆

バランス ★★☆☆☆

ジャガイモ感 ★★☆☆☆

Hunky Doryとは「素晴らしい」という意味をもつ表現ですが、特に素晴らしい商品ではありません。

味についてはお酢の風味が強すぎて、塩気とのバランスは悪い部類といえます。

いわゆるギザギザ系のクリスプスであり、ギザギザ部門ではトップセラーの商品だそう。

部門が限られているとはいえ、このレベルの味でトップセラーという事実には部門全体のレベルの低さを感じざるを得ません。

ギザギザであるだけに厚みというか食べ応えはありますが、どうしても味のレベルの低さが足を引っ張ってしまいます。

食感の面白さはあると思うので、パーティーなんかで多くのクリスプスを持ち寄るときに1つあると通常のクリスプスに飽きた時に役立つかもしれません。

総括すると、他の美味しいクリスプスを引き立てるために生まれた悲しきモンスター的クリスプス。

 

6. Pringles

厚み ★☆☆☆☆

バランス ☆☆☆☆☆

ジャガイモ感 ★☆☆☆☆

こちらはクリスプスというよりかは、日本でもおなじみのプリングルス。アイルランドでは「ソルト&ビネガー」のレパートリーがあるのでご紹介いたします。

味についてはお酢の酸味があまりにも強く、唇がじんじんと痛みを伴うレベル。とても食べられたものではありませんので、味については論外とさせていただきます。

食感についてはおそらく皆さまが食べ親しんでいるプリングルスと、特に変わりはありません。

厚みについても日本のものと大差はなく、こちらの基準でいうとむしろ薄いくらいのレベルになります。

そもそも味が論外であるという点で食べる価値はありませんが、総括すると、空になった容器はなにかしらの工作に使えるプリングルス。

 

7. Passions

厚み ★★☆☆☆

バランス ★☆☆☆☆

ジャガイモ感 ★★★☆☆

アイルランドのスーパーマーケットのなかでは、比較的ローコストのスーパーで購入できるクリスプス。

味については塩気が強すぎます。特に後半からは大粒の塩が固まっていることが度々あり、食べるという行為に辛さを感じました。

やはりローコストであることから、クリスプス全体に満遍なく塩をまぶすなど「丁寧さ」を担保するための設備投資が甘いと推測されます。

クリスプス1枚ごとの大きさは小さめで、側面の皮の残り具合としては良い雰囲気が出ています。

いわゆる岩塩みたいな大粒の塩を使用しているところに、なんとなく高級感を感じるところではありますが、1枚ごとのサイズが小さいクリスプスに大粒の塩が偏ってしまう後半戦はやはり辛いものがありました。

見た目は良いだけに、味のレベルの低さにはがっかりです。

総括すると、ローコストには理由があることを僕たちに教えてくれる社会勉強のためのクリスプス。

 

8. WALKERS

厚み ★★★☆☆

バランス ★★★★☆

ジャガイモ感 ★★☆☆☆

やや低評価のクリスプスが続いてしまいましたが、こちらは恐らく多くの日本人に受け入れられるだろう「WALKERS」のクリスプス。

ソルト&ビネガーの風味は全体的に控えめで、厚みは日本のポテチとほぼ同じです。

薄いので、特に後半戦では細かく砕けてしまっている個体と対峙することになりますが、むしろこの現象はカルビーあるあるという点で日本を思い出しながら完食。

一方で、さすがはクリスプス。カルビーのポテチよりもジャガイモ感はしっかり感じられるという良いとこどりな一品です。

総括すると、ワーホリでアイルランドに染まり始めたころに食べたい、日本人がノスタルジーに浸るためのクリスプス。

 

9. PIPERS

厚み ★★★★☆

バランス ★★★★★

ジャガイモ感 ★★★★★

さて、最後にご紹介するこちらの一品。「PIPERS」が僕がアイルランドで出会った最も美味しいクリスプスです。

まず袋を開けた瞬間のジャガイモの香りが、他のものと比べものにならないほど素晴らしい。良い原料で丹精込めて作られていることが一瞬で分かるレベルでした。

クリスプス1枚1枚の大きさはちょうど良く、味については塩気と酸味ともに控えめ。

その控えめさがかえってジャガイモの風味を引き立てていて、これ単体で食べてもギネスと一緒にいただいても満足度の高いものでした。

ほんの気持ち程度、厚みは薄いかと感じましたが特に問題ないレベル。

適度な厚み、ジャガイモ感の強さにより控えめな味がむしろメリットになっているというトリッキーな味覚のつかみ方は、2002~4年最盛期の須藤元気の試合を彷彿とさせます。

ちなみに、パッケージも可愛いです。

一点問題をあげるとすると、売っているお店が少ないことでしょうか。むしろそのレア度が興奮を掻立ててはくれますが、もっと身近にあってほしいという欲求も感じざるを得ません。

総括すると、僕これめっちゃ好き。

 

「フムス」を付けて食べることについての考察

最後に少しだけ道を逸れて終えたいと思います。フムスという食べ物をご存知ですか?

フンムスあるいはフムス、ハマス(アラビア語:حُمُّص ḥummuṣ, トルコ語:humus、ヘブライ語:חומוס)は、ゆでたヒヨコマメに、ニンニク、練り胡麻、オリーブオイル、レモン汁などを加えてすりつぶし、塩で調味したペースト状の料理。(出典:wikipedia)

トルコ、ギリシアなど中東の広い地域で食べられている伝統的な料理だそうで、そのヘルシーさから昨今では健康に気を使う方たちの間で好まれている料理だそうです。

ちなみに僕は松浦弥太郎さんの「くらしのきほん」で、フムスの存在を知りました。

kurashi-no-kihon.com

個人的に尊敬している松浦弥太郎さんが言及しているのならばと、ずっと気になっていたフムス。

得体の知れないお洒落さハードルと、「そもそもお腹満たされるのこれ?感」から購入を躊躇しておりましたが、クリスプスに付けたら美味しいのではないかという仮説から購入にいたりました。

さっそく付けて食べてみたところ、フムスがもつ豆の濃厚な風味が口のなかに一気に広がり、その後にふわっと訪れるソルト&ビネガーの塩気と酸味。

フムスのやさしさがクリスプスの個性を和らげるようなイメージでしょうか。

 

想像よりもフムスの味が強く「フムスって結構美味しい、フムス!」となりましたが、クリスプスとの相性は良くないというか、一言でいうと珍妙な組み合わせ。

むしろフムスもクリスプスも主原料を考えるとどちらも炭水化物なので、やや炭水化物を摂りすぎているという事実に気づいて少しイラっとすらしてしまいました。

 

というわけでフムスとクリスプスと合わせて食べるメリットは特にありませんので、ご注意ください。お洒落っぽいことは必ずしも正解ではありません。

 

【以下、2017年11月16日追記】

さて。この記事を書いてからというもの、僕は「スーパーに入ったら、未知のクリスプスがないかお菓子コーナーを確認してしまう呪い」にかかってしまいました。

そうやって、お菓子コーナーを確認してしまうなかで出会ってしまった3種+αのクリスプス。実はアイルランドを離れて今はフィンランドにいるのですが、追記させていただきます。

 

追記1. TESCO finest SEA SALT & CIDER VINEGAR

厚み ★★★★☆

バランス ★★★★☆

ジャガイモ感 ★★☆☆☆

大手スーパーマーケットTESCOのプライベートブランドから発売されているクリスプス。

TESCOプライベートブランドのなかでも、「finest」という高級ラインは味にこだわった商品を展開しており、このクリスプスに関しても品質は高いと言えます。

とはいえ、クリスプスとしてレベルが高いかどうかはまた別の話。

クリスプス1枚の厚みはあり食べ応えはあり、味のバランスは良いといえますが、ジャガイモ感が圧倒的に不足。

食べるごとに「塩とビネガーの味つけレベルは高いのに、なぜこんなにジャガイモ感がないのか?」という哲学的な問いが頭のなかを巡ります。

問いの答えを探しながら、クリスプスをよく見てみると、ここまでに紹介したものたちと異なる雰囲気が。

ざらつく手触りに、ぼこぼことした表面。すでにお気付きの方もいらっしゃるかもしれません。

 

そうです、月です。月面です。ニール・アームストロングがここを歩いたかどうかは定かではありませんが、圧倒的なジャガイモ感不足の理由は、そもそもジャガイモではなく月だからでありました。

総括すると、1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩であるクリスプス。

 

追記2. TAYTO Salt & Vinegar

厚み ★★☆☆☆

バランス ★★☆☆☆

ジャガイモ感 ★★★☆☆

2.としてすでに紹介しているTAYTO社のクリスプス。BISTROシリーズとは異なり、さくっと薄いノーマルタイプという位置付けになります。

実はこのシリーズに関しては、オニオン&チーズのフレーバーばかり売られていて、ソルト&ビネガーの取り扱いがないと思っていました。

しかしながら、偶然にもソルト&ビネガーのフレーバーを発見してしまったので掲載いたします。

厚みはダントツで薄く、日本の一般的なポテチと同様の薄さ。

さくっと一袋食べられてしまう気軽さは、たとえば移動中や間食として呼吸をするようにクリスプスを摂取したい際にうってつけ。

日本のポテチとの違いは、ピンクの皮がちゃんと残されているということ。ここはやはりアイルランドのクリスプスです。

とはいえ、他にレベルの高いクリスプスがひしめく中で、これを手に取るべきがどうかを考えるととても悩ましいところ。

総括すると、店頭であまり見ないことに納得できるクリスプス。

 

追記3. KING

厚み ★★☆☆☆

バランス ★★★★☆

ジャガイモ感 ★★★★☆

KINGという名をもつクリスプス。TAYTOと同じく薄いタイプのクリスプスなのですが、KINGという名のとおり、薄い部門のなかではダントツに美味しい一品です。

若干、酸味が強いものの全体的な味のバランスは高く、それでいてジャガイモ感は強い。

ピンクの皮も適度に残されていて、薄いながらも味のバランス、ジャガイモ感を保ちつつ、見た目の美味しさも抜かりない。

強気な名前ながらも、名前負けしていないことは僕が保証いたします。

総括すると、キング・オブ・薄い部門の称号を(僕から勝手に)与えられしクリスプス。

 

追記α. Tyrrell's

厚み ★★★★★

バランス ★★★★★

ジャガイモ感 ★★★★☆

アイルランドで見かけたことはないのですが、実はイギリスにとても美味しいクリスプスがある。

この記事でアイルランド1美味しいと位置付けをした「PIPERS」と肩を並べるほど美味しいクリスプスであるため、+α枠として最後にご紹介します。

全体的に黄色味が強く、クリスプスの外周ほぼ全てをぐるりとまわるピンク色の皮。

見た目の魅力もさることながら、味のバランスも一級。ビネガーは酸味よりも甘味が強く、そこに加わる適度な塩っけ。

PIPERSは控えめな味こそが素晴らしさの秘訣でありましたが、こちらに関しては、主張の強い味こそが最大の魅力です。

クリスプスの厚みも大満足レベル。分厚いだけでなく、やや固めの食感が特徴的。

これは絶対、体に良くないけど、1食分の食事をこれだけで済ませても問題なさそうと思わせられるレベルの食べ応えがあります。

総括すると、イギリスが誇るクリスプス界の堅あげポテト。

 

ちなみに、こちらのTyrrell'sですが、各フレーバーごとに遊び心のあるパッケージデザインを採用しています。

特に「Naked」という塩すらかかっていない、ジャガイモの味だけを堪能するフレーバー(ジャガイモの味だけで戦っているものなので、もはやフレーバーという表現をして良いのか怪しいのだけど)のパッケージデザインが最高なのです。

出典: https://www.ocado.com/webshop/product/Tyrrells-Naked-No-Salt-Crisps/32975011より

 

以上、皆さまのクリスプスライフの向上につながれば幸いです。

形態は機能に従う。機能性とデザインが共存するプロダクト10選 part1~3

「形態は機能に従う」という言葉がある。

かつて、アメリカで活躍し、今日ではアメリカ三大巨匠のうちの1人とされる建築家 ルイス・サリヴァン。彼が残したこの言葉は、デザインと機能性との密接な関係を示しています。デザインの世界で今もなお、語られるこの言葉には「機能性を求めれば、おのずとそれは良いデザインになる」という思想があるのです。

しかし、機能性を追求すれば、必ず良いデザインに到達するかと言われれば、そうではない。どちらかを求めるあまりに一方が満たされていない、ということが少なくありません。(多くの場合は、むしろ共倒れしている)

そんな想いのもと、超個人的見解により、機能性とデザインが見事に共存しているプロダクトを10個ずつ、ゆっくりとご紹介しています。

どのプロダクトも、僕が声を大にしてお勧めしたいものばかり。皆さまの生活を豊かにしてくれる、そんな逸品たちです。

 

part1

 

part2


part3

形態は機能に従う。機能性とデザインが共存するプロダクト10選 part3 |海外渡航編

【2017.6.5更新】

「形態は機能に従う」という言葉がある。

その言葉に込められた意味、そして本当に良いプロダクトとは何か。ということについて「全力でオススメしたいプロダクトのご紹介」という形式で考えてきました。

好きなコト・モノについては、時間を忘れて追求してしまう性格ゆえ、このシリーズも今回でpart3に到達するほどに、素晴らしいプロダクトたちに出会うことができました。

 

昨年に書いたpart1については、僕が常に持ち歩いているもの。物理的にも心理的にも僕の「半径5メートル」という範囲のプロダクトをご紹介しました。

 

part2では、常に持ち歩くものではないけれど、部屋の中に鎮座していて、僕の暮らしに欠かすことのできないプロダクトをご紹介しました。

例えるならば、これは僕の「半径15メートル」というところです。

 

さて、今回のpart3では、その半径がぐぐっと広がります。私事ですが、昨年末からアイルランドのダブリンという街に住み始めました。日本から沢山の「これぞ」というプロダクトを携えて。

そして、ダブリンで生活すること約4ヶ月。そろそろ「これは、本当に持ってきて良かったぞ」という機能性とデザインが共存するプロダクトが定まってきました。したがって、「part3 〜アイルランド/海外渡航編〜」ということで、それらをご紹介したいと思います。

日本から持ち込んだり、一部は渡航後に入手したり。日本とアイルランドをつなぐ今回について例えるならば、「半径9,653km」といったところでしょうか。

※9,653kmとは日本とアイルランドとの距離である。初めて知ったし、ここまでくると当該半径の定義すらよく分からなくなってきた

 

というわけで、今回の10選は以下のとおり。こういった発信を通して、どなたかの生活が豊かになるきっかけになれば嬉しいです。

 

ツカダ Key-Quest 

刃物の町・岐阜県関市がおくる渾身の逸品

国内・国外問わず、旅と小さなアクシデントとは切っても切り離すことができません。そんなときに持ち歩きたいのがマルチツール。しかし、僕はそれに漂うアーミー感が苦手です。

そんな悩みを解決してくれるのが、こちらの「Key-Quest」。刃物の名産地である岐阜県関市の株式会社ツカダによるこの逸品は、鍵を束ねたキーホルダーのなかに馴染みつつ、マルチツールとして必要最低限の機能を備えています。

さすが刃物の名産地と唸らせられるほど、精度の高い金属加工技術がうかがえる「Key-Quest」は、栓抜き・マイナスドライバー・ナット回しなどの定番機能に加え、極寒地で缶フードを食べるときに重宝するプルタブ起こし、ダーンボールなどの開梱に適したカートンオープナー、そして、買い物直後にタグを切ることもできる糸切り機能を備えています。

糸切り機能は思いのほか重宝していて、さらに、当部位の加工については、あまりの美しさに、うっとり眺めすぎて時間を忘れてしまうという副作用もございます。

前述のとおり、鍵を束ねたキーホルダーにも、すっと馴染んでくれます。

余談ですが、Key-Questと同じく、僕も岐阜県で生まれました。

 【2017.6.5追記】

ちなみに飛行機内への持ち込みができないとのレビューもある「Key-Quest」ですが、僕の場合は日本国内では今のところ手荷物検査は問題なし。そして国外ではダブリン、プラハ、ウィーンの3空港の手荷物検査においても問題なく、機内への持ち込みが可能でしたので追記しておきます。

正直なところ機内持ち込みが可能かどうかについては、検査員やタイミングに依存すると思いますのでご参考まで。

 

SUS gallery tsutsu tumbler 

新潟県燕市燕市の職人による傑作タンブラー

岐阜県関市に続いては、新潟県燕市。日本最高峰の鍛冶技術を誇る燕市では、世界一美しいタンブラーが生まれました。

正直なところ、僕はこのプロダクトをご紹介するのがとても心苦しい。なぜならば、2016年12月でこちらのタンブラーの製造が中止となっているからです。

アマゾンの在庫も残りわずかで、国内市場全体での在庫もそれほど多くないはずです。

しかし、今こうして書いている背景には「こんなにも素晴らしいプロダクトが、確かに存在していた」ということを、せめてこのブログには残しておきたいと思ったため。

すっとそこに立つその姿は「ただ美しい」の一言。浅めのマット仕上げがなされたボディは男女問わず使う人・シチュエーションを選びません。

3種あるサイズのなかで、僕が使っているのは最も大きい360mlのもの。最大とはいえ、大きすぎる感は全くありません。サイズ感でいうと、スタバのトールサイズがちょうど入るくらい。

仮に、スタバでこちらのタンブラーを使用している方を見かけた日にはもう、出会って4秒でお声がけです。

飲み口と蓋の構造は、とてもシンプル。最小限のパッキンと、部材ひとつひとつの精度により、中の飲み物がこぼれることはありません。

これで水(たまにお湯)を持ち歩いており、カバンの内部でタンブラーが倒れていることが度々ありますが、中身が漏れたことは一度もありません。

 

ROHDIA ブロックロディア No.12

メモ魔に贈りたい、メモりたい欲を満たすメモ帳1選

ご存知、RODHIA社製のブロックメモ。愛用しているNo.12のサイズ感は、コートやジャケットのサイドポケット、ジーンズの後ろポケットにちょうど納まる大きさです。

いつでも何かをメモりたい、ちゃんと紙で。そんなメモ魔にとって、メモ帳自体のデザインと紙質を考えると、やっぱり「RHODIA」に行き着くのがメモ魔の性(サガ)なのではないでしょうか。

僕は、このようなカバーをかけて、いつもジャケットのサイドポケットに入れています。これは個人的な語学の勉強方法に起因するのですが、一応そこにも触れておきます。

海外に住んでいると、「ん?これってどうやって言葉にしたら良いんだ?」みたいな瞬時がよくある。メモをしないと過ぎ去ってしまう疑問が、常に生まれては消えてゆきます。

そんなとき、「ごめん。めっちゃ言いたいことあるんやけど、僕の英語力で表現できんから、ちょっとだけメモらせて。」と断りを入れて、このメモ帳にささっとキーワードをメモしておき、帰宅後に表現方法を学ぶということをしています。

こちらに住み始めてすぐの頃は、part1でご紹介した「情報カード」で実行していたのですが、メモ帳タイプの方が上記の動きが取りやすく、且つこちらで入手しやすい「ROHDIA」に落ち着いたというところです。

メモ帳だけでも困ることはありませんが、カバーを掛けていることで、カードを収納したり、メモ帳の背面にお札を忍ばせることができるので、第2の財布としても活躍しています。

以前は路面電車用のパスカードを、そして日常の移動が徒歩中心になってからは、ここにスタバのカードを入れています。

 

LUGGAGE LABEL ELEMENT ワンショルダーバッグ

互いが寄り添う、その素晴らしさについて

旅先で街歩きをするとき、いちばん気になるのはスリや強盗ではないでしょうか。(今いるアイルランドでは、パブにふらっと行くとき特に重宝しています)

さて、そんなアクシデントを防ぐために欠かせないのが、ショルダーバッグ。それには色々と選択肢がありますが、個人的にお勧めしたいのはポーチ型ではなく、体に寄り添うボディバッグ型。

なかでも、吉田カバンによる「LUGGAGE LABEL」のものは機能性とデザイン性において、特にお勧めです。日本国内において修理サービスの質が高いこと、そして職人の稼ぎを守るために一切の値引きを行わないこと。その姿勢が大好きな僕は、以前より同社のカバンを愛用しています。

とりわけLUGGAGE LABELというラインの「ELEMENT」というシリーズは、使われている革の質が良く、革製品でありながらも、スコッチガード施され防水加工のレベルが高い。

さらには、収納空間の無駄のなさ、可動部の負荷の逃がし方など、カバン自体の設計としても申し分がありません。

そして、ここまでにご紹介してきたプロダクトたちが、全てこのカバンに入るというのも、特筆すべきところ。

縦長の形状だからこそ、背の高いタンブラーや、折りたたみ傘さえも難なく収められるのも魅力です。

ちなみに、折りたたみ傘については以下の記事でご紹介させていただきました。

参考:

ボディバッグ型ならではの、身体とカバンが互いに寄り添うことで得られる安心感。それは日常の街歩き、パブでの使用で日々実感しています。

お互いがぴったりと寄り添い、それにより生まれる安心感。これはカバンだけでなく、友人、恋人、そして夫婦にとっても言えることなのではないでしょうか。(国をまたいで別居しているお前が言うな、というお声が聞こえてきそうです)

 

 Philippi マネークリップ

古(いにしえ)からのベストセラー、そのポテンシャルについて

マネークリップとは、お金と心に余裕のある紳士が使うもの。そんなイメージが先行して、「いやまだ早い」と避けていたマネークリップですが、日本を離れたことがきっかけで使い始め、今ではその使い勝手ゆえに手放すことができなくなりました。

他のヨーロッパ諸国と比べ、治安が良いと言われるダブリンですが、スリ被害についてはよくある話。街中で財布を盗られるなんて、残念ながら海外では日常です。

そんな状況でいちばん有効なのは、持ち歩くお金を分散しておくこと。財布を盗られたときのために、ジャケットの内ポケットやパンツの前ポケットにもある程度のお金を持っておくことが必須と考えます。

そんなとき役に立つのがマネークリップ。生で挿れるのは少し抵抗があるのに加え、ポケットのなかでお札がぐちゃぐちゃになってしまう、バラけてしまうということが結構なストレスでした。

そんなときにマネークリップを導入したところ、これがなんとも気持ちが良い。

一日の始まりにマネークリップによりまとめられたお札をポケットへ。一日の終わりに、まとめられたお札をトレイに。

シンプルな話ですが、この「まとめられる」という便利さは、使って初めて実感しました。

じゃあ、なぜ"この"マネークリップなのか。

ここからはさらに個人的見解になりますが、「長いあいだ、人に愛されるベストセラーは、その形状を維持しつつ、大きさを操作するだけで用途が拡大する」という持論があります。

もともとは紙をまとめるために生まれ、長きに渡って人々に愛用されるゼムクリップ。そのサイズがただ大きくなり、ステンレスで製造され、マット加工により落ち着いた印象を得た。そんなゼムクリップは、見事マネークリップに用途変更がなされました。

なんというか、この事実って素晴らしくないですか?(素晴らしいに決まっている。そして、この話に共感しない方はここに辿り着く前に、とっくにページを閉じているはずだ)

これを見て初めて「可愛いマネークリップですね!」と声をかけてくれたカフェのお姉さん。あなたは間違いなく女神です。ダブリンに舞い降りし女神です。

ダイアモンド社さん見てますか?ダブリンには女神がいます。次年度の「地球の歩き方(アイルランド編)」に追記しておいてください。

 

ベロス ワイヤーダブルクリップ

「日本のクリップは、こんなにクールなのか!?

このクリップを見た、こちらの友人の発言です。最高の褒め言葉です。(「そのこだわり、クレイジーすぎる・・・」というニュアンスも含まれていた気がしないでもないですが、それはそれで称賛に値すると考えます)

というわけで、マネークリップに続いて「まとめる」という機能をもつプロダクトとしてご紹介したいのが、こちらのダブルクリップ。

大阪に本社を構え、かゆいところに手が届く文具を真摯に作り続ける「ベロス株式会社」によるこのダブルクリップは、「こういうのが欲しかった」まさにそれを叶えてくれたと言えるでしょう。

従来のダブルクリップはデザインではなく、機能面で大きな問題を抱えている。それは一般的に黒いプレートを曲げて作られるパーツの角が、手や他の収納物を傷つけるリスクがある、ということ。

その点、ベロス社製の「ワイヤーダブルクリップ」はデザインだけでなく、繊細なワイヤーのベンディング技術によって、一切の角を排除しているという点で優れています。

それをさらに黒く塗装するという、こだわりようも見逃せません。(ちなみに、ゴールド・シルバーもあります)

耐久性も抜群で、塗装メッキが剥がれてくるほど長いあいだ愛用することができます。

ちなみに、このプロダクトを製造するベロス社が掲げる「貼る、止める、まとめる、飾る このアイデアがベロス、その美しさがベロス」という信念、好きです、その姿勢。これからも全力で応援させていただきます。

(P.S. 「掛タロー」とても素晴らしいプロダクトですが、ネーミングとパッケージングで絶対損してます)

 

Wichard セーラーカラビナ

セクシー

さて、ここで大変なことが起きる。使っていたカラビナが壊れます。渡航前、適当に買ってしまったのが間違いでした。

僕は普段、鍵をまとめたキーホルダーにカラビナを付けている。それをベルトルーフに引っ掛けつつ、パンツのサイドポケットに鍵を仕舞うのが定番だからです。

さて、カラビナが壊れて以降こちらで探すこと1ヶ月ほど。遂に出会ったのが、フランスのマリンメーカー・Wichard社製のカラビナでした。

質実剛健にして美しい。過酷な海の環境に耐えることが前提とされたこのカラビナは堅牢さに加え、そのなめらかなカーブからはセクシーな雰囲気すら感じさせます。

世界で最もセクシーなカラビナ、それは間違いなくWichard社製のものになるでしょう。

ちなみに、サイズはS / Lの2種類。ベルトルーフに通すのであればSで丁度良いかと思います。Lはむしろ大きすぎて、これは本当に過酷な海で使われるやつだと感じました。

細かいことですが個人的に、パンツのベルトルーフに引っ掛けるためのクリップ部分と、キーホルダーを通す穴が分かれていることも重要だと感じました。

なぜならば、この2者が同じ穴に位置している場合、クリップ部分の開閉に伴い、キーホルダーが落下してしまう恐れがあるからです。

余談ですが、セクシーという単語って凄いですよね。セックスの形容詞て。

 

ARC'TERYX ウィンドブレーカー

松浦弥太郎さんも、愛用してる

ダブリンは雨が多い。1日のうちで天気が目まぐるしく変わる環境では、雨具が必須です。

普段は折りたたみ傘を持ち歩いているので問題ないのですが、朝からの豪雨で「これは傘が意味をなさないな」という日に必要なのが、ウィンドブレーカー。

シンプルなデザインと着用したときのシルエットが綺麗なことを考えると、その選択肢はアークテリクスに落ち着きます。個人的にアークテリクス ヴェイランスというラインのバックパック(参考:nomin pack)も使用していますが、アークテリクスの生み出す無駄のないデザインは、本当に美しいと感じます。

バックパックも、このウィンドブレーカーにも共通して言えるのは、ファスナーの止水性の高さです。豪雨の際、このポケットに電子機器を入れて歩き回っても、全く問題がありません。

今日では、多くのアウトドアメーカーが採用しているこのジッパーですが、その始まりは、アークテリクスがファスナーの申し子・YKKに開発を依頼したこと。

このエピソードからも分かるとおり、細かなところまで追求する同社の姿勢に感動する今日この頃です。

分かってます。卑怯なのは分かっています。でも大事なことなので、もう一度だけ言っていいですか。

「松浦弥太郎さんも、愛用してる」(著:松浦弥太郎『日々の100』青山出版社 より)

 

CASIO G-SHOCK ORIGIN GW-5000-1JF

見えないところにこそ、秘められた価値

ここまでで何度か言及していますが、スリや盗難の危険性が高いのが海外。頻繁にスマホをポケットから出すのが難しいことから、時間を確認するための腕時計は必須であると考えます。

そして天候の変化や、その日のアクティビティを気にして腕時計を付け替えるのはナンセンス。そこでお勧めしたいのが、こちらの逸品です。なぜならば、これを1本持っていれば間違いがないから。

デザイン面については、他のシリーズとは異なる落ち着いたカラーリングを採用しており、デジタル時計ながらもフェイスに漂う特別感。個人的に、オフはもちろん、ビジネスシーンにおいても、スーツと合わせてガシガシ使っておりました。

G-SHOCKの堅牢さ・防水性については、もはや語る必要はないでしょう。ここで僕が訴えたいのは、それを所有する喜びです。

1983年に生まれた、G-SHOCKの原点ともいえるスクエアケースのデジタル式。その原点であるデザインを引き継ぎつつ、先進技術を取り入れたのが、この「ORIGIN」と名付けられたシリーズです。ORIGINの中でもいくつかモデルはありますが、僕がお勧めしたいのは「GW-5000-1JF」というもの。

細かな仕様については、公式サイトより引用させていただきます。

重厚なメタルケースで、スクリューバックを採用した初代モデルDW-5000が、最新のテクノロジーを搭載して登場。
電波を通しづらく受信には不利なフルメタルケースで、かつ重厚になるスクリューバックを採用しながら、世界6局の標準電波を受信するマルチバンド6の搭載を実現しました。初代モデルのDNAを色濃く受け継ぎつつ、更なるタフを追求。メタルケース、スクリューバックには耐摩耗性を強化するDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理を施しました。更に、スクリューバックはミラー加工も施し、上質感を演出。また、樹脂バンドには装着感の良いソフトウレタンを採用。1983年に誕生したG-SHOCKオリジナルデザインに最新のテクノロジーを搭載し、更に上質に仕上げたこだわりのモデルです。
・世界6局(日本2局、中国、アメリカ、ドイツ、イギリス)の標準電波を受信し、時刻を修正するマルチバンド6
・タフソーラー
・耐摩耗性を強化するDLCを施したスクリューバックメタルケース
・装着感の良いソフトウレタンバンド

 要約すると「最高である」ということです。

そして特筆したいのが、「GW-5000-1JF」に採用されているスクリューバック。磨きのかかったステンレススチールは美しく、そこに刻印されているのは「MADE IN JAPAN」の文字。そう、このモデルに関しては、日本で組み立てられている日本製だということ。

あまり日本だからどうこうと言うわけではありませんが、僕が好感を抱いているのは、公式でそれを前面に押し出していないところです。

もう少し「MADE IN JAPAN」であることをアピールしても良いんじゃないかと思いますが、こうしてスクリューバックにひっそりと刻印だけされている、その姿勢に対し全幅の信頼を置いているのです。

 

BRAUN MobileShave M-90 

「携帯するということ」を改めて考えさせてくれた逸品

ここでご紹介するのもどうかと思うほど、有名なものかもしれません。

僕はこれまでずっとT字型のカミソリを使っており、電動シェーバーを使ったことはありませんでした。

そして、とあることがきっかけで使い始めるわけですが、その使い心地に驚愕してから「なぜ今まで使わなかった」と過去の自分を恨むほど。

T字カミソリでないと満足に剃れないと思い込んでいた、僕の硬めのヒゲさえもしっかり剃ってくれることに加え、「これをひとつポンと鞄に放り込めばそれで良い」という気軽さ。 

ちょうど良い大きさに、メンズ用のプロダクトとは思えないコロンとした形状。

お尻の部分に、掃除用ブラシが付いているがとても便利で、この収まりの良い光景には愛おしさすら感じます。

今までT字カミソリを使い続けていた僕が、これを手に取ったきっかけは、とある方との思い出なのであります。

同世代ながらその活躍ぶりに僕が尊敬してやまない、とある方。「"ジェントルマン"をテーマにした映画を、選ばれし男性100人が集まって鑑賞する」という文字にするとインパクトの強すぎるイベントに、ひょんなことから、その方と一緒に参加することになりました。

そしてその夜、イベントの締めとして、協賛企業の商品である電動シェーバーをテストするという流れに。ジェントルマンをテーマにした映画を鑑賞し終わった男性100人が、その場で一斉にヒゲを剃り始めるわけです。

さらに目の前では、僕の尊敬している方がヒゲを剃っているわけです。僕もまたヒゲを剃っているし、その他98人の男性たちも漏れなくヒゲを剃っているわけです。しかも、映画とともに美味しいお酒をいただいた男性たちはみな、少し酔ったりしています。

そんな味わい深すぎる環境で、今回ご紹介している「BRAUN MobileShave M-90」の話題になり、すでにそれを愛用しているその方からお勧めをされる。

それがきっかけとなり、僕はすぐに購入し、魅力に取り憑かれたわけなのでした。

 

この電動シェーバーを使用して思い出されるのは、 衝撃的すぎたその夜の思い出と、その方への感謝の気持ちです。(本当にいつもお世話になっています)

僕は単に電動シェーバーを携帯しているわけではない。それに紐づく大切な思い出もまた、海外に携えてきた。

 

機能性とデザインが共存するプロダクトとは、そこに思い出というエッセンスが加わることで、かけがえのないモノに昇華するのです。

 

その人にとっての特別って、そういうことなんだと僕は思います。

 

以下、おまけです。

さて。最後に少しだけ、余計なことを書いておこう。

僕が今、妻と別居をしながらアイルランドという国にいるのは、妻の寛大さがあってのことである。

今後、そのような機会があるかどうかは分からないが、もし妻が「自分も少し海外に行ってみようか」ということがあれば、僕もまた寛大に送り出し、その挑戦を応援したいと思う。

そんな未来の君のために、一般的に用意するであろうものの他に「これを持ってきて良かった」という物たちを備忘録的に書き残しておく、11個だけ。

(もちろん妻以外にも、何かを挑戦するために海外に出る誰かにとっても役立てば、僕は嬉しい)

 

1.折りたたみスリッパ 

滞在先によってはあると便利。やっぱり日本人、部屋でゆっくりするときは靴を脱ぎたいものである。

 

2.目薬 

海外で手にいれるのが困難なもののひとつとして、目薬がある。

その時の君がもし、愛用の目薬があるのであれば、2,3個買って持っていくと良い。そんなにかさばらないし。ロート製薬の「養潤水」は、個人的にお勧め。

 

3.エコバッグ

食材などを買うときあると、やっぱり便利。

買い物するたびにショッピングバッグにお金を払うくらいなら、他のことに投資をお金を使った方が良い。

 

4.糸ようじ

田中家の定番、忘れぬよう。「細いなめらか4本糸」のほうね。

 

5.マルチ電源プラグ変換アダプター 

これがコンパクトで、使い勝手が良いよ。

 

6.海外対応ドライヤー

携帯やPC、アップル社製品、カメラの充電器は変圧器なしで大抵いける。

唯一懸念されるドライヤーについては、この海外対応のものがあれば変圧器を買う必要がなくなるからお勧め。

 

7.メガネ用精密ドライバー 

国によってはメガネ屋さんで無料で調整してもらえる(アイルランドではメガネ屋さんで調整可能)と思うけど、一応ね。

 

8.ソーイングセット

これはあると本当に便利。すでに1回、ボタンを縫うのに使った。

 

9.御岳 百草丸 

百草丸は大きく分類すると2種類あるが、こちらのほうが良い。

 

10.バスルームポーチ

こうやって引っ掛けられるやつは、本当に便利。

 

11.無印良品 アルミハンガー・パンツ/スカート用

これは軽くて持ち運びも楽なうえに、洗濯物を干すのにも収納としても、幅広く使えて良いよ。

いつも使ってる無印の化粧水関係も、忘れぬよう。以上。

形態は機能に従う。機能性とデザインが共存するプロダクト10選 part2

「形態は機能に従う」という言葉がある。

その言葉に込められた意味、そして本当に良いプロダクトとは何か。ということについて前回は「全力でオススメしたいプロダクトのご紹介」という形式で少し考えてみました。

上記の記事では、常に持ち歩いているものなど、気持ち的に僕の半径5メートルという範囲に位置するプロダクトについて、ご紹介しました。

 

今回は、その範囲をもう少し広げます。

半径15mといったところでしょうか。常に持ち歩くものではないけれど、部屋の中に鎮座していて、僕の暮らしに欠かすことのできないプロダクトです。

したがって、今回は生活用品やインテリア雑貨が中心になりました。

 

前回同様に、僕が声を大にしてオススメしたいモノたちを集めています。

皆さまの生活が、ちょっとでも豊かになる。そんな出会いに繋がれば嬉しいです。

 

YAMASAKI DESIGN WORKS ティッシュボックス

ティッシュの存在価値をがらりと変える。

曲げ加工を施したステンレスパーツに、その両側を閉じる2枚の木製のフタ。それら3つの部材で構成されたティッシュボックスです。

このプロダクトのデザインを手がけたYAMASAKI DESIGN WORKS代表の山崎宏さんは、鼻炎持ちからティッシュを手放すことができないそう。それだけに同氏の手がけるティッシュ関連のプロダクトにはポケットティッシュケースをはじめ、並々ならぬこだわりが詰まっています。

ここでご紹介するティッシュボックスは、生活感溢れる置き型ティッシュの存在を、一気に洗練させられるのとともに、ティッシュの置き方の可能性を広げてくれるものであります。

上の写真のように、テレビラックなどの狭いスペースにも配置することができます。また、ティッシュを横方向へ引き抜くその仕組みのおかげで、本と一緒に本棚に配置することもできるのです。

 

 fitia コロコロクリーナー 

公益財団法人日本デザイン振興会 御中。

グッドデザイン賞にも選ばれた、こちらのコロコロクリーナー。受賞したプロダクトが国内に溢れ、獲ったら獲ったでお金ばかりかかる実情に「グッドデザイン賞はクソ」と豪語している僕ですが、今回ばかりは申し訳ない。こちらのコロコロ、本当にグッドです。

インテリアでいちばん困るのは、掃除道具の配置です。掃除道具とは大抵の場合、いまいちなデザインのものが多く、なかなか表に置けないもの。

シンプルなケースと一帯となったこちらのコロコロは、表に出しても様になります。部屋が汚くなる多くの原因は、掃除道具がすぐ手の届く場所に配置されていないことです。しかし、気兼ねなく部屋に置いておけるこちらのコロコロを導入することで、身近なところにコロコロを配置でき、結果あなたの部屋が綺麗になるはずです。

コロコロの取り出しと格納に合わせて、開閉するケースのフタも魅力的です。シンプルながらもストレスを軽減させてくれるギミックに僕は毎度興奮しています。

 

Seiei タイハンガー

せめて、美しく仕舞いたい。

時代の流れとともに、まとう機会が少なくなりつつあるネクタイ。個人的にも、ネクタイと呼ばれる細い布を首に巻くという文化、そしてそれで礼儀作法が少なからず問われる風潮自体が無駄でしかないと感じていますが、日本のサラリーマンとしてはやはりまだまだ手放す事ができないアイテムでもあります。

そんなネクタイを少しでも気持ち良く収納できるハンガーが、こちらです。

金具部分は落ち着いたマット調。ネクタイ一本一本をかけるセンスのないハンガーではなく、まとめてネクタイを掛けられる画期的な方式を採用しています。

そのシンプルな形状がゆえに、ネクタイだけでなくベルトやカバンも引っ掛けることもできます。

 

Blue Lounge ケーブルボックス

人類 vs. 配線、ここに終結。

昨今、デザイン性の高いインテリア家電が増えてきましたが、唯一進歩しないのは「配線コードがあること」です。お洒落な家電でハイセンスな部屋を構築していても、壁際や棚の脇に少し目をやれば、ナンセンスな配線コードたち。

見た目の悪さはもちろん、配線の束はホコリだまりとなり、衛生面でも良くありません。

そこで、配線コードをまとめて見た目にも衛生的にもすっきりさせてくれるBlue Loungeのケーブルボックスです。色は黒だけではなく、種類が豊富であるためどんなお部屋にも合わせることが可能です。

当初Blue Loungeが発売した商品を皮切りに、いろいろなタイプのケーブルボックスが発売されており、今ではヒノキで作られたものもあります。「ヒノキって・・・、たかがインテリア用品に、そこまでこだわる必要ってあるんでしょうか。」

お前が言うなと突っ込まれそうです。

 

大木製作所 スポンジキャッチ aguua

水はけを考慮した断面形状。

お皿洗い用のスパンジの配置には、悩みが尽きないもの。水が切れないからシンクに直置きすることはできず、通風が必要であるため仕舞うこともできない。

そうして行き着くのがスポンジを掛けておくためのアイテムです。個人的にいちばんオススメなのは、シンクに備え付けられたラックから無印の洗濯バサミで吊ることですが、備え付けのラックがなければそれは叶いません。

その場合は、スポンジキャッチが必要になるのですが、僕がオススメしたいのは大木製作所さんによるもの。

ステンレス製のため衛生面やサビについては問題なく、特筆すべきは素材の断面形状。その断面は正円ではなく流線型を描いており、それにより素材自体に水がたまる箇所が少なくなります。同時に、スポンジを引っ掛けることがスムーズに行う事ができるメリットも。

小さな世界に詰め込まれた、大木製作所さんの知恵。こういうこだわり、個人的に大好きです。

 

la base 水切りかご

ありがとう、東京のお母さん(2人目)。

イタリア語で基本という意味を持つla baseというフレーズを掲げたこのブランドは、料理家・有元葉子さん監修のもと多くのキッチンウェアを世に送っています。 なかでもシンクの大きさに合わせてて大きさをチョイスできる、水切りかごはまさに傑作。

繊細な見た目からは想像できないほど頑丈に作られており、特に骨格にあたる材料と、お皿を受け止めるためのワイヤー部分との点溶接部分については、あまりに見事で興奮を隠す事ができません。

また、溶接部分がしっかりしていることにより、接合箇所が少なくなりその結果、汚れや水が溜まるポイントが少なくなっています。新潟県は燕市の職人さんによって作られており、日本の確かな技術が詰まっているのです。

大きな鍋などの重量物を載せても全く問題なく、長きに渡って使用できる堅牢さを兼ね備えているのでコストパフォーマンスは極めて高いと言えるでしょう。

一人で初めて上京したときに購入した料理本が有元葉子さんのものであるため、勝手に東京のお母さん(2人目)と呼んでいます。すごく自然に、勝手に呼んでいます。

ちなみに、東京のお母さん(1人目)は新卒で入社した会社の寮にいらっしゃった寮母さん。とんでもなく美味いご飯を作ってくださる方でした。

 

STAUB ココット・ラウンド

その日、我が家から炊飯器が消えた。

いわゆるお洒落鍋といわれるSTAUB社製のラウンド鍋。今もなおフランスの伝統的な製造方法でつくられており、例えばパーティーなんかで鍋のまま料理を提供できる鍋自体のデザイン性の高さがあります。

もちろん機能面でも優れており、鍋蓋の裏に設けられた「ピコ」と呼ばれる突起が、内部の水分循環を良くし、食材に対し偏りなく水分が降り注ぐように工夫されています。

似ているところでルクルーゼのものもありますが、先に述べた「ピコ」がないのと、ガシガシ使うには少し躊躇してしまうような仕上げが気になるため、個人的にはSTAUBを推します。

ちなみに、我が家ではSTAUBの鍋でお米を炊いています。鍋でお米を炊くのはハードルが高いように思われますが、これが意外と簡単。その簡単さを身を以て知った瞬間、炊飯器は電光石火で廃棄しました。

 

PRISTINE リネンコットンガーゼケット

赤ちゃんだけだと、誰が決めた。

オーガニックコットンの取り扱いに長け、レーディースウェアやベビーウェアを展開するPRISTINE社によるガーゼケット。 通常のタオルケットと異なり、オーガニックコットンとリネンを用いた3層のガーゼ素材で成り立つ逸品です。

肌触りは申し分なく、夏の暑い時期にこれ一枚かけて寝れば、なんとも快適。ガーゼ素材による通気性と適度な保温性で、気持ち良く眠ることができます。

その確かな性能と優しさから、赤ちゃんのおくるみとして使う方も多いと店員さんから伺いましたが、いやいや勘弁してください、そんなの僕がくるまれたい。「親戚の赤ちゃんへのプレゼント」と言いつつ購入したのに、自らが年中くるまれているのは紛れもなく僕です。あの時、恥ずかしくて嘘をついてしまった僕をお許しください。

ひとつ、真面目な話もしなくてはいけません。ふわふわのガーゼ素材は、通気性の良さから夏にもってこいなのは言うまでもありません。特筆すべきは、素材自体に空気を含むスペースがたくさんあるため、保温性にも優れていること。

例えば、冬場に毛布の代わりにガーゼケット、さらにその上から掛け布団を掛ける。すると空気を含んだガーゼケットが断熱性を発揮し、体の熱を外へ逃がしにくくなり、冬の寒さ対策にも使えます。「年中使える」理由はここにあるのです。

 

KTC ラチェットドライバーDBR14

電動ドライバーまでは要らないけど、それに値するドライバーが欲しい。

贅沢な要求ですね。でも安心してください、ちゃんとあります。KTCこと京都機械工具さんによるこのドライバー。

お尻のキャップをはずすと、国内に存在する大抵のネジに対応したプラス・マイナスの先端パーツが格納されています。ガトリングガンを思わせる格納部分のその様は、男心そして一部の女心も掴むはず。

そして、持ち手の部分で切り替えができるラチェット機能。

通常、ドライバーは1回ネジを回すごとに、ドライバーとネジを一旦離し手首を返す必要がありますが、ラチェット機能によりその必要がありません。ネジからドライバーを離すことなく、ネジを回し続けることができるのです。これを使ってしまうと、普通のドライバーには絶対に戻る事ができません。

数あるラチェットドライバーのなかでも、KTCのものはデザイン面でも申し分がありません。観賞用としても一家に1本、是非どうぞ。

 

simplehuman ダストボックス レクタンギュラータッチバーカン

厳かなモノリス、頑丈すぎて7年目。

デザイン性と機能性、そして堅牢性を併せもつアメリカ発祥のハウスウエアメーカーによるダストボックスです。現代美術館に展示されてもおかしくないほどの、傑作アーティファクトと言っても過言ではありません。

僕は捨てるという行為が好きです。具体的に言うと、家事にしろ創作にしろ何か1つの仕事が終わったとき、不要なものを一切合切捨てられる瞬間が大好きなのです。その行為自体をさらに気持ちの良いものに昇華させてくれるのが、こちらのダストボックスです。

指紋のつきにくい仕上げのステンレスの躯体は、シンプルなデザインであり、無駄の無い開閉機構はどれだけ雑に扱っても壊れる気配がありません。上京してすぐに買ったものなので、気づけば7年目。

ちなみに僕が使っているのは、足でバーを踏むタイプのひと昔前のモデルなのですが、腰や手で開けられるこちらのタイプが断然オススメです。

光を鈍く反射する、表面の仕上げ。美しさが過ぎます。

本当のことを言うと、今のモデルから今回ご紹介した最新モデルに買い換えたいのですが、その堅牢さゆえに今のものが壊れる気配がありません。

インテリアショップで最新モデルを見かけては、何度も開閉してその良さを確認していますが、買い換えられることはしばらく無いでしょう。

 

機能性とデザインが共存するプロダクトとは、長きにわたり持ち主に寄り添ってくれるものです。

 

それはデザインの良さから長く愛されることの他に、高い機能性はシンプルな機構とともにあることが多い。それゆえに壊れることがほとんどない。そんなところが長く寄り添ってくれる所以でしょうか。

 

今回のご紹介を通して、皆さまの生活が少しでも豊かになるような、なんだかそんなことにつながれば僕は嬉しいです。

 

part1はこちらからどうぞ。

こちらは番外編。

渡航後に書いたprat3はこちらです。

無垢材の木製家具お手入れ方法とお勧めのメンテナンスオイルまとめ

木材で作られた家具は、定期的なメンテナンスが必要です。

冷暖房の使用に伴う表面のカサつきや、作業や食事など日常の使用による汚れをお手入れすることにより、木製家具を長持ちさせられます。

テーブルや本棚など大切な木製家具と長く付き合っていけるように、きちんとお手入れをしましょう。

お手入れの方法は、それほど難しいものではありません。

このエントリでは、具体的な手順と必要な道具、お勧めの家具用オイルを紹介します。

はじめに知っておきたい、木材の仕上げについて

木製家具の表面の仕上げは大きく「ポリウレタン仕上げ」と「オイル仕上げ」の2種類にわかれます。

まずは、それぞれの仕上げの特徴についてご説明します。

ポリウレタン仕上げ

木の表面が、ウレタン樹脂でコーティングされている仕上げです。

このエントリで紹介しているお手入れ方法は、ポリウレタン仕上げの家具には適しませんのでご注意ください。

ポリウレタン仕上げは、ウレタン樹脂の硬い膜が気の表面を覆っていることで、汚れがついても拭き取りやすいメリットがあります。

一方、長年の使用によりウレタンコーティングが剥げてしまうことがあり、その際は工場などで特別な補修工程が必要になります。

見た目としては、ウレタンコーティングにより木の表面がツルっとしており、木そのものの風合いは薄くなります。

オイル仕上げ

オイルフィニッシュとも言われ、いわゆる「天然の木の風合い」がしっかり感じられます。

ポリウレタン仕上げよりも汚れはつきやすいものの、この後に解説するお手入れ方法により、何十年もきれいに家具を使い続けることができます。

自然由来のオイルを木の表面に薄く伸ばして馴染ませているのが、オイル仕上げの特徴です。

木の表面には薄いオイルの膜ができるのみ。木目の凹凸を触って感じられ、天然の木の風合いを楽しめます。

一方、木の表面に傷がつきやすかったり、水滴などを放置するとシミになったりと、デリケートな面もあります。

木の家具が特に好きな方は、この「オイル仕上げ」の家具を選ばれていることが多いのではないでしょうか。

しっかりと木の風合いを楽しめる「オイル仕上げ」ですが、家具を使い込むうちにオイルが抜けてゆき、撥水性が弱まったり、表面がカサついたりします。

きちんとお手入れをして、できる限り長く付き合っていきましょう。 

お手入れといっても、頻繁に行う必要はありません。また、大変な作業を行うわけでもありません。

お手入れのペースは、1年に2回程度。冷暖房をガンガン使った季節の変わり目、木肌のツヤが無くなってきたかな…と感じる4月と10月あたりがお勧めです。

以降は、お手入れに必要な道具と具体的な手順を解説します。

お手入れに必要なもの

紙ヤスリ

このエントリではかなり目の細かい#800という品番も使いますが、#800を含まない上記の紙ヤスリのセットで十分かと思います。

木片(もしくは、ヤスリホルダー)

このエントリでは、紙ヤスリを巻きつけるためにハンズで購入した木片を使用しています。

Amazonや楽天だと上記のような木片よりも便利な道具があります。

家具用オイル(ケンドリンガー メーベルポリチュア)

お勧めは「ケンドリンガー メーベルポリチュア」と呼ばれるドイツ製のオイルです。

オレンジの成分が含まれており、作業中にふわっと漂う柑橘の香りがたまりません。心からお勧めの逸品です。

オイル塗布用の布

家具用オイルを塗るために適当な布を用意しましょう。

シャツの切れ端などで構いませんが、個人的には理系学生の思い出の品「キムワイプ」のタオル版こと「キムタオル」推しです。

手順1 片付け

全ては場を整えることから始まります。作業がしやすいように片付けをしましょう。

このエントリでは、写真のテーブルを使って木製家具のお手入れ方法を解説します。

手順2 ヤスリがけ

次に、木の表面の汚れを取り除き、滑らかにするためにヤスリがけをします。

使用する紙ヤスリは「#240, #400, #800」の3種類。数字が小さいものほどヤスリの目が粗くなります。

目の粗い紙ヤスリから順に、テーブルの天板を磨きましょう。

天板の上には、目に見えないものも含めてたくさんの汚れが付いています。ヤスリがけで、その汚れを落とします。

目の粗いヤスリ→目の細かいヤスリの順で磨くことによって、「木の表面が整い、最後に塗るオイルが馴染みやすくなる」効果があります。

木片に紙ヤスリを巻きつけるとヤスリがけの作業が楽になります。

木片はハンズなどで売っていますが、木片でなくても冒頭で紹介したヤスリがけ用のハンドサンダーがあればさらに作業が捗ります。

最も目の粗い#240で天板をまんべんなく磨きました。

紙ヤスリには、汚れとともに細かい木の粉が大量に付いています。

木粉は床にも落ちますので、あらかじめ新聞紙などを敷いておくと良いでしょう。

ちなみに僕は、気にせず床に落としてしまい、最後に掃除機がけをしています。

#240→#400→#800の順にヤスリがけを行いました。木の表面は、木粉が浮いて白っぽくなっています。

木の表面を触ってみると指に粉が付くのと同時に、天板の汚れや傷がなくなり表面がツルツルになっているのが分かるかと思います。

なお、ヤスリがけを行うときは、木目の方向に沿って行うということをお守りください。

手順3 水拭き

天板に付いた木粉を取るために、固く絞ったふきんで水拭きをします。

水拭きをした直後は一旦、写真のように綺麗になりますが…

水分が乾いてくると、再び木の表面が白っぽくなってきます。

この白さは、木粉がまだ残っているわけではありません。

ヤスリがけにより木の表面が薄く削り取られて、オイルで保護されていない木肌があらわになったためです。

人の肌で言うならば、洗顔をしたあとに化粧水や乳液をつけずに放置してしまっている状態です。

次の手順で、あらわになった木肌にオイルを塗ってあげましょう。 

手順4 オイルがけ

いよいよ最後の工程、オイル仕上げです。

家具用のオイルには色々なものがありますが、お勧めは冒頭で紹介した「ケンドリンガー メーベルポリチュア」というもの。

革製品のメンテナンスオイルなどを展開するTAPIR(タピール)社製のもので、オレンジの成分が配合されているのが特徴です。

作業中に漂うオレンジの香りが素晴らしく、お手入れ後の家具からふわっとオレンジの香りがするのが幸せすぎて長く愛用しています。

メーベルポリチュアを適当な布に付け、天板全体に馴染ませてゆきます。

布については特にこだわることはないですが、目が細かく柔らかいものが扱いやすいかと思います。ふきんやシャツの切れ端なんかで構いません。

オイルが全体に行き渡りました。

天板全体がつやつやしてきたら、ひとまず休憩。

オレンジの香りに包まれながら、15分ほど読書でもしましょう。

もしオイルを余分に塗ってしまった場合は、オイルが表面に浮いてきます。浮いてきた余分なオイルはから拭きしましょう。

なお、オイルが浮いていなくても、この15分後のから拭きは行ってください。から拭きを最後に行うことでオイルの馴染みが良くなります。

以上で、お手入れは完了です。

 

最後の片付けの際は、オイルを染み込ませた布の取り扱いにご注意ください。

オイルを含んだ布に太陽光が当たることで、自然発火する恐れがあります。

自然発火は滅多にあることではありませんが、布を捨てるまで水に浸しておく、光を通さない袋や容器に入れて捨てるなどの対策をしておけば完璧です。

*****

木製家具は、生きています。

家具という役目を果たしながら、木肌のカサつきや汚れでお手入れの必要性を訴えます。

定期的なメンテナンスを通じて、大切な家具とより長く付き合っていきましょう。

最後に、今回のお手入れで使った道具をまとめておきます。

 

紙ヤスリ

木片(もしくは、ヤスリホルダー)

家具用オイル(ケンドリンガー メーベルポリチュア)

 オイル塗布用の布