フィンランドで食べた一生分(15+1店舗)のシナモンロールから選ぶ最高の逸品および考察
「日本のものと、まったく違う。」
フィンランドで初めてシナモンロールを食べたとき、舌で、脳で、日本で食べてきたシナモンロールとは完全に別物なんだと知りました。
見た目にも美味しい生地表面のカラメルと砂糖、ふわっと香るシナモンとカルダモンのスパイス感。ただただ、美味しい。
「いつかフィンランドでたらふくのシナモンロールを食べたい」という夢を抱くきっかけになった映画「かもめ食堂」のなかで、登場人物たちが食べていたこの食べ物の美味しさは想像以上に贅沢で、味は複雑に構成されていて、それぞれに魅力的な個性をもっていました。
このエントリでは、僕が食べ歩いた全てのシナモンロールを超独断と偏見によりご紹介します。
フィンランドを旅行される方にとって、滞在中のベストチョイスにつながれば僕は嬉しいです。
フィンランドのシナモンロールの特徴とは?
日本のシナモンロールというと、上部に渦を巻いたふわっとした生地と、アイシングと呼ばれる白い砂糖衣がとろっとコーティングされている菓子パン。そんなイメージではないでしょうか。
一方で、フィンランドのものは渦巻きが個体の左右にひとつずつ、生地は見た目よりも重量が感じられ、表面の食感ははサクサク・ザクザク、ときにパリッと。
生地上部にはアイシングではなく、フロストシュガーと呼ばれるゴマ粒大の砂糖がまぶされています。
半分に割ってひとくち頬張ると、ザクっとした食感とともにシナモンとカルダモンの風味が口いっぱいに広がるフィンランドのシナモンロール
現地の言葉ではシナモンロールではなく、ビンタされた耳という意味をもつ「コルヴァプースティ」という名前で呼ばれ、今回のフィンランド滞在で僕がいちばん声に出した単語であります(もはやコルヴァプースティと叫ぶだけの機械と化していた)。
シナモンロールをご紹介するにあたり事前にお伝えしたいこと
僕はフィンランドのシナモンロールを食べるのが今回初めてであるということで、初めに現地新聞によるシナモンロールランキングで1位を獲得したというお店に足を運びました。
まずはこちらでフィンランドのシナモンロールの概要を掴んでいただければ幸いです。
0. 最高を知らずしてものを語る資格なし。地元新聞主催ランキング1位のポテンシャルに触れる「Kanniston Leipomo」のシナモンロール
全体的に甘さは控えめ。日本のシナモンロールとの違いに驚き、その美味しさに感動しました。
シナモンの風味は主張しすぎておらず、生地の表皮はパリッと焼きあがっている一方で、中はふわっとしています。
お店のWEBサイトはこちら▶︎Kanniston Leipomo
シナモンとカルダモンのバランスが良くシンプルに美味しいけれど、直感で尖った個性は感じられず「たしかに美味しいけれど、ランキングで1位を取るほどのもんなんだろうか…」と。
現地では好まれる味なのかもしれないけれど、「もっと心を打つシナモンロールがあるんじゃないだろうか(実際あった)」という気がしてなりませんでした。
そんな経緯で、「ここはひとつ、徹底的にやるか」と現地情報を駆使して美味しいシナモンロールを掘り進めることにしました。
品評会場
ということで、ここからは残りの15店舗について僕の超独断と偏見により、特徴をご紹介します。
厳密なランキング形式というわけではありませんが、前半から後半にかけて美味しいものへと続いており、最高の逸品は最後に。
今後フィンランド旅行に行かれる方にとって、滞在中のベストチョイスにつながれば僕は嬉しいです。
1. 越えてはならぬ一線を越えた。素晴らしい建築に騙されてはいけない雰囲気美人系「Cafe Aalto」のシナモンロール
フィンランドが誇る建築家アルヴァ・アアルトによるアカデミア書店。
三層にわたる吹き抜けと回廊式の店内には、天窓から自然光がたっぷり降り注ぎ、アアルトによる建築を巡る際にはまずこのアカデミア書店からスタートするのがお勧めです。
さて。素晴らしい建築の一方で、シナモンロールは最低でした。
書店のなかに併設された「Cafe Aalto」でいただけるシナモンロールは、シナモンの風味はちょうど良いものの、生地はふかふかというよりはスカスカ。満足感は極めて低いといえます。
後にも先にも、ここまでスカスカ感のある個体はありませんでした。
今回訪れたお店のなかで唯一、温めて提供される形式でしたが「むしろやめて」という気持ち。熱が冷めてきて、スカスカの生地がくたっとした状態は悪夢でした。
今回の品評において金額は考慮していませんが、1個あたり2.5〜3.5ユーロが相場というなかで5.4ユーロという極めて強気な価格設定。
観光地としての価値が高いのをいいことに、越えてはいけない一線を越えていると感じました。
2. お店の風格の一方で感じざるを得ない味のペラさ。150年を超える歴史をもつ「Ekberg」のシナモンロール
1852年から続く老舗であり、高貴な雰囲気をまとったマダムたちがコーヒーとお喋りを楽しんでいたのが印象的。
そんな「Ekberg」のシナモンロールに感じたのは、圧倒的な不足感。
甘さはかなり控えめでカルダモンのスパイス感もほぼ感じられず、良いように言えばお淑やかでお上品なのかもしれませんが、個人的には「味がペラい…!」と感じてしまうほどの物足りなさでした。
一方で、しっとりとふわふわの間をいく生地には、多くの方に好まれるであろうポテンシャルが感じられ、生地のレベルは高いだけに味の物足りなさに落胆せざるを得ませんでした。
歴史あるお店だけに接客は一流でしたが、シナモンロールは三流以下。こちらのお店では、シナモンロール以外の注文をお勧めします。
▶︎Ekberg - Perinteitä jo vuodesta 1852
3. エロくはない「エロマンガ」のシナモンロール
ヘルシンキで最も古い歴史をもつ屋内市場オールド・マーケットホールの近くに店舗を構える「Eromanga」。
ハカニエミと呼ばれるマーケットでもブースを出店しており、今回はハカニエミのマーケットでいただきました。
砂糖とシナモンの主張が全体的に強く、今回食べ歩いたなかでは最も甘いと感じました。生地の表面では砂糖が良い塩梅でカラメル化しており、見た目にも美味しい。
生地は軽めのふわふわ系でありながら気泡の密度が低いために、食べ応えはきちんと感じられます。
一方で、日本のコンビニ菓子パンをおもわせるチープ感があり、店名のインパクトの割には普通以下のクオリティだなと感じました。
▶︎Eromanga – Kotileipomo Helsingissä
4. 握りこぶしを超える大きさはインスタ投稿必至。ヘルシンキ最大と言われる「Cafe Esplanad」のシナモンロール
事前調査で現地の人たちが「ここのコルヴァプースティはマジでデカい」と言っており、その大きさが気になる存在でしたが、確かにデカかった。
今回食べ歩いたなかでは間違いなく最大であり、大人の握りこぶしを軽く超えてくるサイズ感は、おもわずインスタ投稿してしまう方も多いことでしょう。
しかしながら、味のバランスに関しては若干の不足感。
シナモンの香りは適度にあるもののカルダモンのスパイス感が弱く、甘ったるいうえにサイズが大きいという状況は好ましくないどころか苦行ともいえます。
生地はやや弾力があり、もっちり感が非常に強いため食感としての食べ応えもあります。
サイズの大きさもあいまって、これひとつで一食分とカウントできそうな勢い。お試しの際は、お腹の空き具合にご注意ください。
▶︎Café Esplanad | Helsinki / Helsingfors
5. 硬派な一面と足りない甘さ。純喫茶好きには堪らないノスタルジックな雰囲気が漂う「Marocco」のシナモンロール
ヘルシンキ中心部からはやや離れたアルヴァ・アアルト設計のフィンランディアホール近くに位置しており、静けさと純喫茶をおもわせる店内の雰囲気につい長居してしまいました。
シナモンロールに関して、まず驚いたのは生地の硬さ。かなりの噛み応えがあり、今回のシナモンロールのなかでは最高の硬さをもつ個体になります。
生地の詰まっている感が強く、パンとして非常に美味しいと感じました。
一方で、シナモンの風味とカルダモンのスパイス感は全体的に弱め。先のご紹介でペラさを感じた「Ekberg」ほどではありませんが、控えめが過ぎます。
硬派な生地に対してもう少し甘さ、そしてシナモンとカルダモンのバランスの良さがあれば、さらなる飛躍を遂げそうな伸びしろを感じる個体でありました。
6. 疲れた脳に糖分を。テンペリアウキオ教会の空間で思考を駆け巡らせ切った建築クラスタにお勧めしたい「Cafetoria」のシナモンロール
ヘルシンキで建築を巡る方にとって見逃せない、大岩をくり抜いて造られたテンペリアウキオ教会から徒歩5分ほどの場所。
オリジナルのコーヒーグッズも販売する「Cafeteria」では、こだわりのコーヒーによく合うシナモンロールをいただけます。
若干いびつに巻かれた生地はやや硬めで噛み応えがありながら、中はふんわり。気泡が多めのふんわり感と硬めの表皮のバランスは絶妙といえます。
断面の観察状況からは、生地内に練りこまれているシナモンの総量は少ない印象ですが、シナモンの風味はきちんと感じられます。
一方で、カルダモンのスパイス感が薄めなので味に奥行きはないものの、お店のコーヒーと組み合わせて食べることが前提であれば、カバーすることができるスパイス感不足だと感じました。
コーヒーありきの素晴らしさという点で、シナモンロール単体での評価はそれほど高くはありませんが、テンペリアウキオ教会の複雑に絡み合う素材と空間構成の妙に触れて思考を駆け巡らせた後にコーヒーとシナモンロールを、というシチュエーションであれば是非お試しいただきたい組み合わせです。
▶︎Organic and ethical coffees, crafted in Finland with passion and love for what we do - Etusivu
7. 街の喧騒を忘れてゆっくり頬張る。隠されすぎの隠れ家カフェ「GOTTLAND Deli」のシナモンロール
僕が今回の旅で最も感動したアアルト邸の近く、団地が立ち並ぶ一角に佇むとても小さな隠れ家カフェがあります。
木々が茂る道を歩きながら、あまりの見つけにくさとに「さすがに隠されすぎ」と感じましたが、シナモンロールのクオリティの高さは隠しきれないほどでした。
シナモンの風味とカルダモンのスパイス感とのバランスが恐ろしく絶妙。味の良さでは、現地新聞ランキングで1位を獲得した「Kanniston Leipomo」の上位互換といったところです。
生地がもつバランスの良さも特筆しなくてはいけません。ふかふか感としっとり感のバランスを保ちつつ、表皮はサクサクと。巻かれた生地の隙間に行儀よくシナモンが詰まっており、断面も美しいと思いませんか?
6席ほどしかない店内に近所の人が集まる様子は、ローカル感がありありと感じられ、そんなお店の空気と合わせて是非お試しいただきたいシナモンロールです。
▶︎Gottland
8. 地元ファンの多さにも納得。シナモンのねっとり感と生地のもっちり感で心を掴みかかる「Regatta」のシナモンロール
まずお伝えしたいのはお店の個性。海に面したロケーションとコテージのような佇まい。いちばんの売りは焚き火を使ってセルフサービスで焼くソーセージです。
またコーヒーをお代わりするとなぜか5セントをもらえるという謎のサービスもあり、千鳥風にコメントするならば「クセがすごい」。
中心地からのアクセスはそれほど良くないながらも現地での評価は高く、ここでいただけるシナモンロールもまた人気なのだそう。
生地表面にはアーモンドがまぶされており、見た目にも個性を放ちつつ食欲を誘います。
驚いたのは生地のふわふわ加減。今回のシナモンロールのなかで最もふわふわ感が楽しめる個体といえます。
それに加えて素晴らしいのは、シナモンのねっとり感。
生地のふわふわ感とこのねっとり感の組み合わせはやみつき必至で、この日までに食べてきたシナモンロールのイメージを覆してくれる美味しい衝撃がありました。
一方で、甘さが強すぎるのがとても惜しい。ブラックコーヒーとの組み合わせでないと辛いところがあり、単体での注文はお勧めできません。
▶︎Cafe Regatta - Tuhansien tarinoiden kahvila
9. 映画かもめ食堂のことは一旦忘れよ!良い意味で期待を裏切ってくれる「Atelier KAMOME」のシナモンロール
多くの方にとってシナモンロールといえば、映画「かもめ食堂」というイメージがあるかもしれません。
映画の舞台となったレストランはヘルシンキに実在しており、そのレストランに併設するカフェとして「Atelier KAMOME」はあります。
第一印象としては、「映画で出てきたシナモンロールと全然違う見た目だ」ということ。
映画のものより小ぶりな印象で、かつ若干いびつな巻かれ具合からは個性を感じます。
とはいえ、映画に忠実かどうかは問題ではありません。
小ぶりながらずっしりと重いシナモンロールをひとくち食べてみて驚いたのは、かなりのもっちり感。
表皮にパリパリ感を残しながらも、それを遥かに超えるもっちり感があり、写真からも見てとれる密度がもっちり具合を物語っています。
きちんと甘く、シナモンの風味も感じられるバランスの良さから、直感で日本人の舌にウケそうだと感じました。
映画「かもめ食堂」のことは一旦忘れて、是非お試しください。
▶︎Atelier KAMOME - ホーム | Facebook
10. ヘルシンキNo.1カフェが放つ一品。生地に詰まった美味しさとマスターの思想に感服「Ipi Kulmakuppila」のシナモンロール
居心地の良さとお店のコンセプトから、僕が最も感銘を受けたヘルシンキのカフェ「Ipi Kulmakuppila」。
ここでいただけるシナモンロールのクオリティもまた素晴らしいものでした。
▶︎お店は下記エントリにてご紹介しています
まず驚いたのは、生地の巻かれ方。
渦巻きが左右ほぼ均等に現れるようにして巻かれるシナモンロールですが、こちらは片側のみ渦巻きを設けつつ生地に練りこまれたシナモンをがっつり見せつけるスタイルをとっています。
見た目のとおりシナモンの風味はしっかり感じられて、どこをかじっても満遍なくシナモンが感じられることに感動しました。
生地は硬めでしっかりと密度が保たれているタイプ。
表皮のサクサク感とフロストシュガーのガリっと感とのバランスも良く、どんな角度で切り取っても欠点のない優等生といった印象です。
カフェ紹介エントリでも語っているとおりですが、お店のインテリア、コンセプト、そしてシナモンロールで申し分のない一店。
是非お試しください。ヘルシンキ滞在がきっと豊かになるはずです。
11. 小ぶりな生地に凝縮された魅力と可愛い店員さんに思わずモイモイ。地元のお客さんで賑わう「Hopia」のシナモンロール
余談ですが、フィンランド語で「やあ!どうも!」にあたる表現として「Moi!(モイ!)」という言葉があります。
そして「Moimoi!」と繰り返すと日本語でいうところの「バイバイ」となるのですが、街中でモイ!やモイモイ!が飛び交う様子はとても可愛らしい。特に女性が言われた時の可愛さはなんとも言えないインパクトがあり、思わずモイモイしてしまう男性も多いのではないでしょうか。
そして、ベスト・オブ・モイモイを体験できるのがこちらの一店。フィンランドのきゃりーぱみゅぱみゅのような店員さんが放つ「モイモイ」はまさにフィンランドの国宝でありました。
もちろんモイモイ抜きにて、シナモンロールのレベルは非常に高いものでした。
今回のシナモンロールのなかで最も小さいサイズでありながら、もっちり感があり密度の高い生地には安定感を感じます。
表皮の砂糖が溶けたカラメルのサクサク感と香ばしさが強く、それがシナモンの風味に奥行きをもたらしており、地元のお客さんの足が途絶えない様子にも納得。
地元の人たちに長く愛されるローカル感と、美味しいシナモンロールを楽しみたい場合は、こちらのお店がお勧めです。
▶︎Konditoria Hopia – Konditorio leivonnaiset kahvila töölö helsinki
12. "羽根付きシナモンロール"を提唱したい。カラメル色の羽根に心を射止められる「Bon Temps Cafe」のシナモンロール
羽根付き餃子といえば蒲田の「ニイハオ別館」ですが、"羽根付きシナモンロール"といえばヘルシンキの「Bon Temps Cafe」です。
焼き上げる過程で溶けたカラメルが広がり、シナモンロールの羽根となったその様子はまさに芸術。チーズブレッドなんかでも、たまにありますよね?こういうの。
ゆっくり慎重に羽根を食べるときのあの体験は、神々の遊び。味という概念を超越した、喜びの化身とも形容されるやつです。
もちろん特徴は羽根だけではありません。
生地は硬めでサクサクとしており、重たいクロワッサンと言えるほど積層する生地からは強い香ばしさが漂っています。
しっかり甘めに焼き上げられており、コーヒーとの相性は抜群。
単体で食べても美味しかったですが、硬くて甘い生地をひとくち頬張りコーヒーを口に含んだときのマッチングはまさに至福。羽根のインパクトだけに収まらない美味しさがそこにはあります。
甘い味がお好きで、なおかつコーヒーとのハーモニーを楽しみたい方は是非お試しください。
13. パティシエが手がけるバターの香る小ぶりな宝石。次元の違いを感じる「Patisserie Teemu & Markus」のシナモンロール
2人の男性パティシエによるパティスリーには、まるで宝石のようなシナモンロールがありました。
普段ケーキを提供しているのであろう可愛らしいお皿で提供される様子に、期待値は上がります。
アップで確認すれば一目瞭然ですが、群を抜いて美しいシナモンロールであることが分かります。
大小を掛け合わせたフロストシュガーに、スライスされたナッツが少々。さすがパティシエによるシナモンロールだけあって、芸術性の高さにも抜かりがありません。
表皮はややパリッとさせつつ、中は日本で好まれるようなソフトなパンの食感。
それでいて、今までのシナモンロールで感じることのなかった強いバターの香りが相まって、まるで本当にケーキを頬張ったときのような幸福度で満たされます。
他のシナモンロールを寄せ付けないほどの高貴な雰囲気をまといつつ、きちんと美味しい実力も備えている。
見た目と味が極めて高い水準で実現されている芸術的なシナモンロールといえます。
▶︎Konditoria Helsingin keskustassa - Patisserie Teemu & Markus
14. 変幻自在のトリックスターとして。独自の戦略でファンの記憶に深く残る名作「Sävy」のシナモンロール
本当はこのシナモンロールが最高の地位に着いても良かった。しかし、これをベスト・オブ・シナモンロールにすべきか本当に悩んだ。結果、しなかった。
なぜならば、あまりに特異であるためシナモンロールという枠に収めて良いのか結論づけられなかったからです。
シナモンロールの特徴であるこんがりとした焼き色や表皮のフロストシュガーはなく、アイボリーカラーの生地は驚くほどのもっちり感。本当に驚くほど、もっちり。
カルダモンのスパイス感は控えめですが、シナモンとバターの風味がともに高くて好印象。
個人的には物凄く好きなのですが、トリッキー過ぎることが否めません。
入場パフォーマンスと、変幻自在のトリックスターと呼ばれる所以になった独自の戦い方で、今もなおファンの心に残る2002〜4年最盛期の須藤元気が思い出されて目頭も熱くなります。
前述の食感も僕は大好きだし、味も申し分なし。僕の好み100%の視点でいえばトップにしたいところなんです。
しかしながら、乳白色の見た目といい、ポン・デ・シナモンロールと言いたいほどのもっちり感といい、これは本当にシナモンロールの枠に入れて良いのか…
っていうか、そもそも生地がロール状になってねぇ……っ!!!
という経緯で悩みに悩んだすえ、ベスト・オブ・シナモンロールはこの後に続く個体に決めました。
▶︎Kahvila Sävy - ホーム | Facebook
15. バリッと固めの生地に控えめな甘さのベストバランス。週7で食べたい「KAFFA ROASTERY」のシナモンロール
さて。今回2週間の滞在中、徹底的に食べ歩いたなかで最も美味しいと感じたのがこちらのシナモンロールです。
淡く焦げ目のついたカラメルとバリっと硬めの生地は、非常に食べ応えがあり、かぶりつくたびに香ばしさが嗅覚を刺激。
生地の中はふんわりしており、それはまるで硬い表皮に守られていた柔らかで贅沢な美味しさが解放されていく、そんな感覚をおぼえます。
甘さは控えめながらシナモンとカルダモンのスパイス感はガツンと感じられて、「無骨で旨い」ともいえるこの味覚体験は甘いものが苦手な方にも食べていただきたい。そんな逸品です。
お店のwifiパスワードを聞いたときに「コルヴァプースティ」と返答されたときには笑ってしまったのですが、パスワードにシナモンロールを持ち込むあたりにお店のシナモンロール愛が感じられます。
▶︎KAFFA ROASTERY - Kahvipaahtimo Punavuoressa
ちなみに、12.以降については正直なところどのシナモンロールがトップでもおかしくない状況でした。
今のレシピに辿り着くまでの間にかなりの試行錯誤があったのであろう、味のレベルの高さと複雑さ。そして、それぞれのシナモンロールが放つ個性。
甲乙付け難いなか、本当に毎日食べたいかという目線で判断したときに「KAFFA ROASTERY」のシナモンロールに行き着いた。というのが今回のベスト・オブ・シナモンロール選定における決定打でした。
最後に
これは完全に偶然なのですが、僕がフィンランドのカフェ巡りをしたなかで厳選したカフェ3店舗について、今回のシナモンロールに関しても全て高評価に食い込むという結果になりました。
▶︎厳選した3店舗
僕がカフェも選ぶための2つの大きな基準は、コーヒーの美味しさと、お店の居心地の良さ。
このことから、レベルの高いシナモンロールの背景には、それに見合う美味しいコーヒーがあるか、お店の内装は居心地の良いものであるかという要件も関わっていそうです。
それに加えて個人の好みも大きく関わると思いますが、今回の食べ歩きで感じたことが、今後フィンランドでシナモンロールを食べてみたいという方の手助けになれば嬉しいです。